約 3,371,965 件
https://w.atwiki.jp/haruhi-suzumiya/pages/29.html
SOSならだいじょーぶ God knows… パラレルDays First Good-Bye Lost my music
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/31.html
196 名無しさん@秘密の花園 2006/09/26(火) 15 34 02 ID JENIC1rF ENOZメンバーに可愛がられるハルヒを見て何となく面白くない長門とみくる。 …妄想乙>俺 197 名無しさん@秘密の花園 2006/09/27(水) 22 11 13 ID Gge6gGy8 バンドのために楽器の練習を始めてから、ハルヒが文芸部室へ現れなくなった。 本人は「あたしより有希の方がギター上手いのよ、悔しいから軽音楽部へ習いに行ってるの」と言っている。 確かにあいつは極度の負けず嫌いだが、だからってわざわざ他人に教えてもらうか?独学で何とかするんじゃないか? そう考えていると、 「あの…すいません、今日はもう帰りますねっ」 朝比奈さんが部室を出て行った。 いつもは天使のような朝比奈さんだが、 最近は何故か落ち着きがない。 メイド服にも着替えないしお茶も淹れてもらえない。 窓の外を見て溜息をつき、部屋の中をうろうろしたり… 「…………」 考えているうちに、もう少しで長門が出ていくのを見逃す所だった。 これはもっと珍しい、下校時間には早すぎるぞ? とにかく、SOS団の活動時間は長門が本を閉じるまでだ、俺も帰ろう。 その前にハルヒの様子でも見に行くか… 「じゃあまた明日…あ、キョン!?い、一体どうしたのよ?」 部屋の前まで来ると、ちょうどハルヒが出てきたところだった。 いくら何でも驚きすぎだろう、目が潤んでるぞ。 「長門も朝比奈さんも今日はもう帰ったから解散だ」 「あ、そうだったの。じゃああたしも帰るわ」 ハルヒはそそくさと立ち去った、そんな逃げるように行く事ないだろ。 そういえば3時間ライブしたかのように汗ばんでいたし顔も紅潮していた。 それに頭のカチューシャが教室で見た時と少しずれている。 一旦ほどいたのか? やっぱり、最近のあいつはどこかおかしい。 …あ~、無理だ書けない。ながるんは勿論、各スレでSS書いてる人って凄いよ
https://w.atwiki.jp/riboonn/pages/31.html
ハルヒ 一言:あ~な~た~のー髪色~ す~こ~し~色~素が~ う~す~い~の~ねー♪(ネ・ネ・ネ・ネ・ネクロマンサー!!(※違います)
https://w.atwiki.jp/textlib/pages/260.html
民主党ですがもう立派な【赤軍】 http //anchorage.2ch.net/test/read.cgi/army/1248183329/ 571 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 08 29 ID ??? しかし、なんでキョンはハルヒの力で世界征服とか、戦争根絶を企まないんだろう? 混沌の邪神呼び出すとか、日常生活に張りがでそうな気がするんだが。 572 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 10 43 ID ??? 571 理想の世界実現のためにハルヒを口説き落とすようなやる気のあるキョン子なんて、キョン子じゃないだろ。 575 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 12 15 ID ??? 571 ハルヒが、それを望んでいないからでしょ? 非日常を一番望んでいないのはハルヒだろうし。 だから、非日常を平然と受け入れるキョンがカギなわけで。 576 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 12 34 ID ??? 571 キョンはハルヒが好きだからじゃないかな 577 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 12 36 ID ??? 572 男だったらやる時はやらんといかんだろ。 世界制服とか、人類巨乳化計画とか。 583 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 17 43 ID ??? 575 エスパー少年や生体端末の言うことが事実か確認する必要性を感じないか? 世界がどこまで改変されるのか、知りたいと思うだろ、普通。 バランシェとかいうキチピーも言ってたじゃないか。 584 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 20 07 ID ??? マジレスしとくと、ハルヒに自分の能力を気付かせてはいけないという方針で合意してるので、そもそも ハルヒの力を積極的に利用して~~というifは、物語設定上封じられてるぞ。 586 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 22 30 ID ??? 583 だから、それをすると価値観が崩壊するから、ハルヒがそれを望まず、結果としてキョンはそれを起こさないんだって。 非日常を受け入れながらも、極限状況でさえ日常を保ち続けられるから、キョンはカギとして選ばれたわけで、 そういう好奇心に負けて、価値観の崩壊を引き起こすような人間なら鍵として選ばれず、 逆説的に、ハルヒの能力を誘導することができる立ち位置につけないんだよ。 卵が先か、鶏が先かは知らん。 588 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 24 55 ID ??? 584 それこそが、「なぜ?」なんですけどね。 それこそ、あの3人の中で、「ハルヒが能力を使わないこと」を望んでいるのは、古泉だけですし。 現状維持をする理由は何か。 とかとか。 595 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 29 52 ID ??? 586 世界から戦争がなくなっても、日常の「価値観」は崩壊しないだろ。 598 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 30 44 ID ??? 588 観察が目的のみくる&長門も、能力に気付くことを望んでませんぜ。 一方、むしろ積極的にハルヒが能力を使用することを望む情報思念体急進派が朝倉をキョンに 差し向ける…ってのが『涼宮ハルヒの憂鬱』のあらすじですね。 599 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 30 56 ID ??? 590 キョンがカギであることに、必然性がないと考えるんなら、それは成り立つが、 必然性があると考えるなら、それは成り立たないんだよ。 成り立たないから、鍵たりえたわけで。 ちなみに、長門たち3人に関しては、3人が3人とも、それぞれの立場で嘘を言っていると思うぞ。 矛盾点もいくつかあるし。 そのうえで、3人が共通して取り違えている点もあるわけで、そのあたりを考慮すると、キョンがあの正確なのには必然性が生まれると。 604 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 35 03 ID ??? 584 気付かせずに利用する方法ならいくらかありそうなもんだが 605 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 35 46 ID ??? 小泉が嘘を言ってるのが解るが・・・。 しかし、キョンは「君は一般人ですよ」という小泉のセリフを無条件に信じている のはそうでありたいという願望からなのか? 606 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 36 11 ID ??? つまりキョンは先天性EDと・・・ 608 名前:・・・・・・ ◆OVNYPzgZN2 [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 36 24 ID ??? 604 利用する勢力が入り乱れて・・・一歩間違えれば「ひぐらし~」 になりそうな気が。 610 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 37 54 ID ??? 604 そこはメタ的な調整ですな。 キョン自身、ときどき(『消失』とか)ハルヒの力を使ってでも~とか発言してるけど、そこまでする前に 事件が解決するようになってるという。 611 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 38 31 ID ??? 595 争うという概念がなくなれば、十分崩壊するがな。 598 だから、「なぜ?」なのかということです。 それをすることに、どんなメリットがあり、それを破ることに、どんなデメリットがあるから、それを望まないのかと。 それこそ、朝比奈さんの言う「予定調和」でさえ明々白々な嘘なわけで、 長門の観測者という立場も、いろいろと疑問の残る設定ですよ? 612 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 40 40 ID ??? 611 争うという概念がなくなる必要はない。 鉄砲撃ち合って戦争する、という事象がなくなればいい。 614 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 40 57 ID ??? 605 一般人という定義次第ですが、特殊な能力は持っていないし、 持っていたらそれこそ鍵には選ばれないでしょう。 古泉の言う「一般人」とキョンの信じる「一般人」と、我々が思う「一般人」は、同一のものではないですが。 616 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 41 56 ID ??? 611 予測不可能なことが起きたとき、誰もストップかけられないから慎重にいきましょうってのが 『憂鬱』の段階での説明だったかと。 617 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 42 22 ID ??? ハルヒが本当に世界を改変する力を持っていれば、キョンはあんな回りくどい告白 をすることはなかったと思うんだが。 それこそ放課後の教室で、極普通に告白するんじゃないかね? 618 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 42 52 ID ??? 612 で、どうやって問題を解決するんだ? 戦争以上に、クールな問題の解決方法がこの世に存在するとでも? そもそも、現実を改ざんしたら、矛盾点が生まれるわけで、 それこそをハルヒが望んでいないと言っているんだが。 戦争はある、ハルヒがそれを信じているからこそ、それを否定しないためにハルヒが暴れ、キョンが東奔西走するんだよ。 619 名前:名無しモスボーラー逆打ちforノムたん34番所 ◆MothB.a5TA [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 43 25 ID ??? てゆかキョンはまにまにの朔と同程度には平穏な日常を望んでいるんじゃないかと。 自らすすんで厄介ごとの種は増やさないでしょぉ 621 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 45 10 ID ??? 616 予測不能の事態を避けることに、意味があるとは思えないんですよ。 もちろん、古泉にとっては、危険が大きすぎますし、 朝比奈さんにとっても、危険性を無視できる話じゃないでしょう。 でも、こと長門に関して言えば、危険性は無視できる範囲です。 617 ハルヒが、キョンのことが好きだから、キョンがカギになったということ自体が、うそだと思う。 626 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 49 05 ID ??? 621 みくる&一姫は「なるべく現状維持でいこーぜー」派。 長門は「唯一無二の観察対象だから、壊さないようにいこーぜー」派。 ちなみに平凡かつ平等な生活から抜け出してなんか特別なことしようぜ→は、やっぱり普通が一番は 当時の流行スタイルでもあるのでそのへん考慮する必要もあり。 627 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 49 31 ID ??? 619 キョンが平穏な日常を望んでるなら、長門が改変した世界から帰ろうとしないだろ。 630 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 52 27 ID ??? 世界を変える力を持ってるのは実はキョンじゃないのか? ハルヒがおかしな力を使い出したのは、キョンが小泉に言いくるめられてからだし。 632 名前:名無しモスボーラー逆打ちforノムたん34番所 ◆MothB.a5TA [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 53 31 ID ??? 627 どの世界ニカ? …「平凡な日常をハルヒに破壊される日々」としたらどうなるだろうかなどと考えて見たり 633 名前:・・・・・・ ◆OVNYPzgZN2 [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 54 17 ID ??? 630 『エンドレスエイト』もキョンがトリガーだしね。 635 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 55 10 ID ??? 632 長門がふつーの女子高生で、ハルヒが別の高校に通ってて小泉と付き合ってる世界。 636 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 56 12 ID ??? 635 あれ?あの人ガチホモじゃなかったの? 639 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 57 50 ID ??? 626 長門にとって、ハルヒは唯一無二ではないですよ? 唯一無二だとすると、朝比奈さんの存在意義が崩壊します。 物語に出てくるハルヒと、時間障壁を発生させたハルヒを同一とおくのは無理があるわけで。 それ自体を嘘とおくと、未来人の目的自体が不明になるんで、いくらでも妄想できますが。 異時間同位体と同期でき、さらに、時間軸に垂直な障壁が存在しうる世界である以上、 時間は最低でも3次元で有り、長門たちはそれ以上の次元に存在しているわけです。 一つの第一時間軸上の出来事など、大した問題ではないでしょうし。 もちろん、消失とか、あのあたりの時間軸まで進むと、希少さは上がりますが、これまた、唯一無二ではないですし。 641 名前:名無しモスボーラー逆打ちforノムたん34番所 ◆MothB.a5TA [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 58 06 ID ??? 635 ウリは今回のアニメが初見だからそれは知らないニダ やっぱりこう、ハルヒにぶち壊されることで逆説的に日常の有り難味を噛み締められる現状が好きなのかもw 642 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 02 58 08 ID ??? 636 長門がいじくりまわしてるから、違うんだろう。>小泉がガチホモ でも、ハルヒは押しかけ女房っぽいし、小泉がホモ隠しに使ってるだけなのかも。 643 名前:七猫伍長 ◆4gYfuUCcAY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 00 00 ID ??? 642 ところで古泉であって、小泉ではありません。 ジュニーがガチホモで誰が喜ぶって・・・・ ああ、一人いるかもしれない。うんw 646 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 01 55 ID ??? 639 『憂鬱』終盤、世界の改変の開始に対して長門が「失望している。進化の可能性は失われた」という旨の 発言をしている通り、情報思念体にとってもハルヒは唯一無二の設定ですぜ。 649 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 04 55 ID ??? 646 長門は自分の発言を事実と思っているが、事実ではない可能性もある。 652 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 06 49 ID ??? 649 原作で情報が示されていない領域に踏み込む「深読み」までいってしまうと、コメントのしようがないな。 そういう二次創作を作ってみてはいかが?くらいしか言うことがない。 655 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 09 47 ID ??? 646 とすると、そこらじゅうに矛盾が生まれるわけですが。 あるいは、俺が思っているほどハルヒは普遍的な存在じゃないのかもですねぇ。 分裂とかの設定を見る限り。 いずれにしても、長門にとっての時間と世界の感覚を普通の人間のそれを同一視するのは、明らかにおかしいですよ。 朝倉のセリフあたりからも、第一時間軸上での存在の途絶を絶対視する感覚は、彼女たちにはなさそうですし。 657 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 12 30 ID ??? 655追記 そもそも、「完全に失われた」とは言っていないわけだし。 消失の際の対応との違いを考えると、アレがそこまで一大事だったようには思えなかったり。 660 名前:名無しモスボーラー逆打ちforノムたん34番所 ◆MothB.a5TA [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 13 40 ID ??? そういうことで寝るニダ よきエンドレスエイトの夢を 661 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 14 17 ID ??? 655 朝倉の目的は「キョン子を殺すことで、ハルヒに次元震を起こさせそれを観測する」というもので、 ハルヒ喪失の恐れが少ないから実行されたと考えてみてはいかが?(キョン子の死亡により ハルヒ自殺等の可能性より、キョン子が死ななかった世界を望んで次元震を起こす可能性の ほうが高いと判断した) ま、いずれにせよこのへんは「深読み」の領域ですが。 663 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 21 22 ID ??? 661 「生死の概念~~」のあたりです、朝倉のセリフ。 唯一無二の存在があるなら、それをリンクさせることで存在の途絶に関する感覚は推察できますし。 高次元的に存在し、第一時間軸的に普遍で、第二時間軸以上の時間にまたがって遍在する存在からすると、 それぞれの第一時間軸上での存在の途絶や存続に、意味を感じることはできないのでしょう。 664 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 24 58 ID ??? 663 あれには前置きがあって、「“有機生命体の”死の概念がよく理解できない」と言ってます。 逆に言えば、有機生命体以外の何かの死の概念には、よく理解できるものがあるってことですね。 666 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 31 06 ID ??? 664 長門の説明が下手なんだよ。 「時間を移動できる私には、時間を移動出来ない有機生命体の死の概念がよく 理解できない。だって、過去に戻れば、死者は生きているから」 ぐらい言えば、有機生命体にも理解できるんじゃね? 669 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 36 47 ID ??? 664 そのあたりの言葉尻を取り始めると、深読みの類になりますぜ? いずれにせよ、「時間軸上に垂直な障壁」がある「時点」で「発生」していている時点で、 その時間障壁は「第二次元以上の時間軸方向に起点を持つ」ことが確実で、 それを迂回できない未来人の時間移動技術は、時間障壁と平行な方向に移動することが不可能なのも確実。 さらに朝比奈さん(大)という存在がいる=物語上の朝比奈さんは二代目以降であるという条件から考えると、 朝比奈さん(小)がいる時間軸は、朝比奈さん(大)が活躍していた時間だけ、時間障壁と平行な方向にずれているわけで、 それを作ったハルヒと、物語上のハルヒは、確実に別の存在なわけです。 それに、タイムパラドックスの説明でも、時間軸上にハルヒが遍在することは確実でしょう。 672 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 44 02 ID ??? 661 なんで「子」を付けるこの変態! 677 名前:フィーメイルドレス ◆HHnm1kjdqY [sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 52 51 ID ??? 669 どーせ後から情報出てきたら全部ひっくり返る可能性もあるし、ひとまず静観しとくかーって話に なっちまうので、深読みは深読みとしてやるのは楽しい。 671 でも「機能停止」って概念なら分かるのよね、朝倉… 672 ふぇ? キョン子はキョン子ですよ? キョンって誰ですか? 681 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2009/07/22(水) 03 59 54 ID ??? 677 うい、機能停止=「死」じゃないんですよ、彼女たちの感覚だと。 これを、機能停止を全体の停止と考えない=ゲームでミスったようなものととらえるか、 別の形で存続しているととらえるのかは、人それぞれでしょう。 両方という可能性もありますね。 いずれにせよ、現時点で判明しているハルヒに関する情報や、長門たちの自己申告はすごーく信用ならないということです。
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/29.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 ループ・タイム 「東中学出身、涼宮ハルヒ」 おいおい、やめてくれ。 「ただの人間には興味ありません。この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」 俺は垂直にすれば月まで届きそうな深い深い溜息をついた。 最初にこのセリフを聞いてから、間違いなく一年が経つはずだ。 なのに、なんで俺の後ろにいる長い髪の不機嫌そうな美少女は、同じセリフを繰り返す? OK、認めよう。 ここは一年前だ。同じ一年を繰り返している。 おそらく、俺だけが。 『ループ・タイム――涼宮ハルヒの憂鬱――』 なにかを後悔したとき、人は必ず、「ああ、時間が戻ってくれたらなあ」なんて溜息を漏らすものである。 もちろん、時間が戻ってしまったとすれば、本人の記憶も失われ、結局は、同じ行動をとることになってしまうはずであり、「いや、自分の記憶だけ残して云々……」などと言い出すと、願望は非現実的な方向へ、非現実的な方向へと突っ走っていくことになる。 このため、大人になるということは、過去を諦めるということである、と俺は悟りを開いている。 だからな、ハルヒ。 遣り残したこと、やり足りないこと、失敗を悔やむ気持ち。よーくわかるが、ほんとに時間を戻してどうする、このアホ。 しかも、俺の記憶を残してどうするつもりなんだ、お前は? 『涼宮ハルヒの意図がどこにあるのかは不明。現段階で、一年間の記憶を持っているのは、あなたと私だけ。朝比奈みくる、古泉一樹、涼宮ハルヒの記憶は消去されている』 携帯に入れていた長門の番号は消えていた。四苦八苦して思い出し、宇宙人に助力を請う。 なんといっても、古泉はまだ転校していないし、朝比奈さんは、ハルヒが拉致ってくるまで、俺とは面識がない。 唯一、長門は、三年前に俺と会っている。それに、八月の時と同じなら、長門は記憶を保っているはずだ。 ……長門、まさか、これも一万回以上繰り返している、なんてことはないよな。 『ない。このループは、初めて観測される。涼宮ハルヒの能力は、次第に減少していたため、情報統合思念体は非常に興味を抱いている。しばらく、私は観測に専念する』 「そうか……もう一つ。朝倉のことだ」 教室で朝倉に「おはよう、私、朝倉っていうの。よろしくね」と微笑まれたときには血の気が引いた。 『情報統合思念体は、今回の時間の巻き戻しに影響されない。朝倉涼子は、情報結合を解かれ、存在していない。あれは、私が構成したもの。情報操作の能力を持たない、ただの女子高校生……安心して』 わかった……俺はどうすればいい? 『なにが涼宮ハルヒに時空改変を起こさせたのか、現時点では不明。現状維持が望ましい。だから、朝倉涼子も復元した』 つまり、この一年間を、なるべくそのままなぞるってことか? 『そう……どこかで、時空改変を直す鍵が見つかるはず。それまでは静観』 なるほどな。じゃあ、そのうち、ハルヒと一緒に文芸部室に押しかけていくことになるだろうから、そのときは頼む。 『……また』 切れた。俺はまた溜息をつく。前回は二週間で、夏休みにやり残したこと、という具体的なヒントがあった。今回はどうだ。一年間とは、ちと長いんじゃないか、ハルヒ? ともあれ、現状維持だ。なに、一年前の行動をなぞればいい。俺は一年前の記憶が消えていないんだから、まあ、楽勝だろう。 ハルヒに話しかける、最初のセリフといえば決まっている。古泉のような作り笑いも忘れてはならないな。 「しょっぱなの自己紹介、どこまで本気だったんだ?」 作り笑顔を浮かべ、ハルヒの方を振り返って言ってみる。 「全部」 ハエタタキを叩きつけるような答えが返ってきた。 ……アレ?なんか違わないか。 ハルヒはそのまま口をへの字にして、腕を組んで黙っている。これで会話終了なのか? 冷や汗が吹き出てきた。俺はセリフを間違えたのか。やばい。楽勝どころか、いきなり氷山にぶち当たった豪華客船のごとく撃沈しそうだ。 冷たい海に投げ出されたがごとく青い顔をする俺に、ハルヒは少し興味を示してきたようだ。 「なに、あんた深刻な顔して……もしかして、あんた宇宙人?」 「いや、俺は違う」 あわてて否定する。なんとか話を元の流れに戻さないと。このあと、ハルヒは、だったら話しかけないで、時間の無駄だから、と言う筈だ……。 「俺は?ふーん、知り合いには居るみたいな口ぶりじゃない」 げっ、食いついてきやがった! 「ち、違う、知り合いにもいないっ」 「妙に必死ねぇ……あんた、ますます怪しいわ」 こいつの驚異的なカンの鋭さを、すっかり忘れていた。まるでエスパー並だ。 ライオンに追い詰められたガゼルのように汗をだらだら流しながら沈黙する俺を見つめて、ふぅん、とハルヒはお宝を前にした海賊のような笑みを浮かべる。 直後、担任の岡部が入ってきたから救われた。 そろそろと辺りを見回すと、東中出身の奴らは、信じられない、と驚愕の目つきで俺を見つめていた。 うう、そんな、たまたま網にかかった珍奇な深海魚を見るような好奇の目で俺を見ないでくれ。 『……さほど問題はないはず。でも、なるべく、一年前を再現するよう努力して』 すまん、長門……。 だが、俺の失敗は続く。 昼休み、俺は屋上で長門に定期連絡を入れていた。 屋上に出るドアの合鍵は長門につくってもらった。ここなら、気兼ねなく長門に連絡できる。普段はしっかり鍵がかかっているからな。誰も来ない。 「ああ、いまのところは問題ない。順調だと思う。……ああ、じゃあ、また報告をいれる。じゃあな」 ふう、やれやれと俺が電話を切って、携帯をポケットにしまったときだ。 「見たわよっ!!」 突如、ハルヒが現れた。 「あんたが怪しいから後をつけてたら、鍵がかかっていて出られないはずの屋上で電話してるじゃない。それも三日連続!間違いなく、母船で待機している宇宙人との定時連絡だわっ!!」 ハルヒは脱兎のごとく逃げだそうとする俺にハイエナのように掴みかかった。ハルヒが、「とりゃー」と掛け声をかけて放ったあざやかな脚払いを喰らって、俺はあっさりとコンクリートに倒れこむ。ハルヒは倒れた俺に馬乗りになった。マウント・ポジション、逃げられん。 「これが端末ね……携帯電話に偽装してもわかるんだから!あたしによこしなさいっ」 「やめろ、正真正銘の携帯だ、ただ電話してただけだっ」 ハルヒは無情にも俺の手から携帯を奪い取る。 「どれどれ……なにこれ、発信履歴が『長門有希』ばっかりじゃない。ははあ、これが宇宙人の連絡要員に間違いないわね」 血の気が一気に引いた。なんたって当たっている、大正解だ。 必死にハルヒの手から携帯を奪い取ると、思いっきりハルヒのわき腹をくすぐってやった。 笑い出すハルヒが体を浮かせた隙に、ハルヒの体の下から脱出し、俺は逃げ出した。 「あ、こら待ちなさぁいっ!」 『……あなたと私が知り合いである、という設定にする。私たちは図書館で出会い、貸し出しカードの作成をあなたが手伝った。私はお礼を言おうとしていて、同じ高校に、偶然あなたを見つけた。先ほどの電話は、また二人で図書館に行く相談ということにする』 つくづく悪い。俺のミスばっかりだ。 『いい。一年前と同じにならないのは、涼宮ハルヒの意志とも考えられる。ならば、多少の変更があっても問題ではない。それより――』 なんだ? 『いつ図書館に行く?』 学校ではハルヒに追っかけまわされ、放課後には長門と図書館に行く、その繰り返し。そうこうしているうちに、ゴールデンウィークが明けた。 本来、俺とハルヒの間に、はじめて会話が成立する時のはずだ。 しかし、会話が成立するどころか、学校での俺は、すでに四六時中ハルヒに監視されている。俺は涸れた井戸の底のように暗い気持ちで教室のドアを開けた。 「おはよっ、キョン!!」 ……この調子だ。だが、一応、言うべきことは言わねばなるまい。満面に1000ワットの笑みを浮かべるハルヒに向かって、ボソボソと俺は呟いた。 「……曜日で髪型変えるのは、宇宙人対策なのか」 「そうよっ!どお、効果あるかしら?あんた、ビリビリと波動を感じたりしない?」 「しない」 「ふーん、じゃあ、切っちゃおっかな。あんた、ショートとロング、どっちが好き?」 「……ポニーテールが好きだ」 俺がそう言うと、ハルヒはげらげら笑い出した。 「あははは、だからあんた、火曜日になるとあたしのことをマジマジ見てるのね!」 俺がどう答えたものか困っていると、担任の岡部が入ってきて、その会話は終了。 だが。 翌日、ハルヒの髪型は、見事なポニーテールになっていた。 少し顔を赤くしたハルヒが、俺を見ながら照れたように言う。 「どお?」 「……似合ってる」 おい、これが、ハルヒの望んだ流れなのか? 『……おそらく』 やれやれ。 「全部の部活に入ってみたってのは……」 「そう、全部入ってみたけど、全然面白いのがないのっ!まったく、ようやく長い義務教育時代が終わって期待してたってのに、高校には失望だわ。 ホント遺憾をおぼえるわね。……まあ、部活なんかより、よっぽど面白いことがあるからいいけどね」 なに、それ? ハルヒは満面に笑みを浮かべて指差した。 「あんたよっ!」 「付き合う男をみんな……」 「ぜーんぶ振ってやったわ!どいつもこいつもホンット普通の人間よ。 電話なんかで告白してきて、日曜日に一緒に映画館行って、暗闇の中で手つなごうとしてきてまるで馬鹿みたい!まったくつまんないったらありゃしないんだから。……ま、今度はなかなか退屈しないで済みそうだけどね」 なに、それ? ハルヒは満面に笑みを浮かべて指差した。頬が少し赤い。 「あんたよっ!」 いやいやいやいや、ちょっと待てよっ!! 谷口が、白昼堂々幽霊が歩いているのをみたような、驚愕の表情を浮かべて俺のところにやってきた。 「おい、キョン、お前、いったいどんな魔法を使ってるんだ?」 谷口、実のところ、俺にもまったく全然理解ができないんだよ……。俺が教えて欲しいくらいだ。何がどうなったらこうなるんだ?誰か知ってる奴がいたらここに来てくれ。説明願おう。 「驚天動地だ。空前絶後だ。国士無双だ。あの涼宮とまともに付き合える人間がいるなんてな」 おい、俺とハルヒが付き合ってることは既成事実か?決定事項なのか? 「キョンは昔から変だからなあ」 こら、国木田、デフォルトとセリフが違うぞ。俺が変になってどうする。 「あたしも知りたいな」 谷口ランクAA+の美人委員長、朝倉涼子が顔を出す。そうだ、そういえば、こんな流れがあったな。どうやったらハルヒと仲良くなれるのか、とかなんとか―― ……あれ、朝倉さん、心持ち、顔が赤くないですか?なんで? 「……キョンくん、涼宮さんのこと好きなの?」 朝倉、なんでそんな質問するんだ? 急に朝倉はまつげを伏せる。心なしか、少し表情が曇っているように見えるが。 「ううん、なんでもない……ごめん、気にしないで……」 だが。 翌日から、朝倉涼子の髪型は、これまた見事なポニーテールになっていた。 みんなアホばかりだ。 席替えである。引き当てた俺の席は窓際後方二番目。ハルヒは当然のようにその後ろに席を落ち着けた。 まあ、ここら辺は変更なしだ。いやあ、なんとなくホッとするな。 ハルヒがまったく憂鬱な顔をしていないで、「キョン、また前後ろの席ね!」とか言って、妙に嬉しそうなのが気にかかるが……。 さて、そろそろ、ハルヒが新しい部活を作ると宣言する時間だ。 俺は、いつ頭を机にぶつけるのか、電気椅子に座った死刑囚のように、ひやひやしながら英語の時間をすごしていた。 ………… あれ、いつまでたっても、ハルヒが手を伸ばしてこないぞ。おかしいな。 ………… 英語、おわっちまうぞ!まさか、SOS団は結成されないのか? 「ハルヒ!」 焦った俺は、振り返ってハルヒの肩を掴んだ。 「な、なによキョン。あ、まだ駄目だからね。あたし、キスは付き合ってから一ヵ月後まで許さないの。それで、三ヶ月目には……」 「いや、そうじゃなくて、その、ぶ、部活、部活はどうした?」 「へ?言ったじゃない。どれもこれもつまんなくて……」 「ないんだったら作ればいいんだ!」 思わず、俺は声を大きくした。SOS団だけは、なんとしても結成しなくてはならん。 「何を?」 「部活だ!!」 ハルヒは、軽く溜息をつくと、俺の肩に手をやった。 「……あとでゆっくり聞いてあげる。そのヨロコビを分かち合ってもいいわ。でもね、今は落ち着きなさい、キョン」 ……いかん、これじゃ俺とハルヒの立場が逆だ。また冷や汗がたれる。 「授業中よ」 ハルヒは、泣きそうな英語教師に向かって手を差し出し、授業の続きを促した。 「部室のあてはあるの?」 昼休み、ハルヒは俺の顔を覗きこんだ。ポニーテールが揺れる。 あたしが部室を確保するわっ……と一年前のハルヒなら叫んでいたはずだが。 ああ、お前は変わっちまったなあ、ハルヒ。なんだか悲しくなる。暴走族の先頭でブイブイいわせているようなお前はどこに行っちまったんだ? 俺はまたボソボソと言う。 「……文芸部に知り合いが居る。部員一名で、廃部寸前なんだ。そいつが唯一の部員で……朝倉ともそいつは知り合いだ……」 「ふーん……ま、いいわ。じゃ、いこっか、キョン」 ハルヒは笑顔で俺の腕をとって、自分の腕を絡めた。 恋人同士のように、ハルヒと腕を組んで部室棟に向かって歩きながら、俺はハルヒに引きずられて連行された一年前を懐かしんでいた。 なんだか、どんどんズレが大きくなっていくな……。 文芸部室のドアを開ける。 ああ、懐かしい光景だ。長門が椅子に座って分厚い本を読んでいる。眼鏡がないのを除けば、再現率は100パーセントだ。さすが、長門。 「この子が、キョンの知り合いの文芸部員?へえぇ、可愛い子ね」 「長門有希」 む、とハルヒの表情が変わる。ハルヒの全身から怒りのオーラが滲み始めた。 「キョン、長門有希って……あんたの電話の履歴にあった子ね……同じ学校なのにあんだけ電話で話すなんて、よっぽど親しい間柄かしら?」 ハルヒが握っている俺の手が、ハルヒの握力に悲鳴をあげる。いたい、いたいから、ハルヒ! 「長門さん」 ハルヒが長門に向き直る。普段よりも半オクターヴほど下がった、非常に険悪な声だ。 「あなたとキョンの関係は……友達以上と捉えていいのかしら?」 「いい」 な、長門っ!? 「……わたしとキョンの関係は気にならないの?」 「別に」 まずい、まずいって!! 「ふーん……じゃあ、あなたをライバルと見なしていいのかしら?」 「どうぞ」 お前、他にセリフを用意してないのか!? ハルヒの目が、なんともいえない強烈な光をギラギラと放っている。部屋の体感温度が一気に5度は低下して、俺は寒気を感じた。 「ま、そういうことみたいね」 ハルヒは俺を親の仇のようにギロリと睨んだ。 「放課後、この部室に集合ね……あと、キョンは死刑だから」 わかったよ、死刑は嫌だから……って、決定事項かよ! 「先に行ってるわっ!」 ハルヒは、陸上部から勧誘を受けるのも頷けるほど、見事なスタートダッシュで教室を出て行った。その顔が引きつっているところを見ると、おそらく長門が気になるのだろう。 これから文芸部室で何が起こるのかと考えると、またまた溜息が出た。 『キョンのこと、どう思うの?』 『ユニーク』 『どんなところが好き?』 『ぜんぶ』 『……え、遠慮しないのね』 『わりと』 『……ふーん』 『……』 修羅場じゃねーか!そんな、引火寸前のガスが充満しているようなところに、俺は、聖火のトーチを持って突入しなくてはならんのか。 その、聖なる炎の名は、朝比奈みくるというわけだ。 あー、朝比奈さんですよね。 「そうですけど……あなたは誰ですかぁ?」 キョンとでも呼んで下さい。突然ですが、涼宮ハルヒって知ってますか? 「あ、時間だん……禁則事項です」 あなたは、未来人ですね? 「……禁則事項です」 ハルヒのせいで、時間断層ができたんでしょう? 「……禁則事項です」 その涼宮ハルヒと一緒に、部活を作ったんです。宇宙人の長門有希もいます。朝比奈さん、あなたも入ってくれませんか? 「……うう、詳しすぎますぅ……あなた、本当にこの時間平面の人間ですかぁ?」 まあ、事情があって、この一年間を繰り返しているんです。あなたに敵対する未来人ではないですから、安心してください。 「わかりました……これがこの時間平面での……」 「まあ、既定事項なんですよ」 きめのセリフを奪われた朝比奈さんは、ぷっと頬を膨らました。ああ、可愛らしい。久々に朝比奈さんを拝めたのは何よりの幸福だ。 さて、緊張の一瞬である。 文芸部室のドアの向こうに流れる気配は、尋常でなく重い。そして、絶対零度のように冷たい。敏感な小動物のように、朝比奈さんがふるふると震えだしたほどだ。 ええい、破れかぶれだ! 「よお、遅れてスマン!捕まえるのに、手間どっ…ちゃっ……て……」 な、なんなんですか、なんて空気ですか、ここ、レバノンですか? 凍りつくような沈黙に閉ざされたハルヒがツカツカとドアに歩いてきて、黙ってガチャリと鍵をかける。 なんで、かか鍵をかけるんですかっ、ハルヒさん!! 「黙りなさい」 ハルヒの押し殺した声に、俺はびくっとなって固まった。 「……すごい美少女を連れてきたのね」 ハルヒは、怯える朝比奈さんを眺め回す。 「しかも、すごい巨乳」 後ろから朝比奈さんの胸を揉みしだく。朝比奈さんは怯えてしまって、コブラに睨まれたアマガエルのように固まって動けそうもない。ハルヒのなすがままだ。 「ロリ顔で、巨乳?あんたの趣味?なんでこの子を入部させようというのかしら、キョン?説明が欲しいところね」 なんて言えばいい?まただらだらと冷や汗が……。 「こういう……マスコット的キャラも……必要かと……萌え要素が……」 ごっちーん!! グーで頭を殴られた。ハルヒは怒りに燃えて、顔が真っ赤になっている。 「真性のアホね、あんたはっ!!キスは二ヶ月延期、エッチは四ヶ月延期だから!!せいぜい、悶々と夏を過ごす事ねっ!このバカキョン!!」 ………… 「で、この集まりの名前はどうすんの?」 うむ、これだけはゆずるわけにはいかない。思い入れもある。一年経って、愛着さえわいてきた名前だ。 頭がじんじんと痛むが、それをおして俺は立ち上がって宣言しようとした。 「もう考えてある……いいか、俺たちの団の名前は……」 と、俺が言いかけたとき、横から長門がすばやく言った。 「SOS団」 ハルヒが眉をしかめる。 「なにそれ、センスないわね」 ……このやろう、一年前にお前が考えたんだよ、元はといえばっ! 「……世界を、大いに盛りあげるための長門有希および、涼宮ハルヒの団。略して、SOS団」 あれ、ちょっと違わないか?長門。 「ふーん、まあ、いいわ。有希、みくるちゃん、よろしくね……………負けないから」 なんだ、ハルヒ、最後にボソッと呟いたのは!? 「なんでもないわよ、アホキョン!帰るわよ!!」 顔を赤くしたハルヒが俺の腕を掴んで、自分の腕を絡ませた。 これにて、今日の活動、終了。 『とにかく、SOS団が発足した。これは前進。問題はない』 問題はありありだと思うのだが……やれやれ。 さて、パソコンである。 カマドウマ事件を引き起こしたり、閉鎖空間で、長門のメッセージを送ってきたり、世界改変での緊急脱出プログラムになるなど、非常に活躍が多いアイテムである。SOS団の活動には、なくてはならない、と言ってもいい。 だが、果たしてコンピ研から奪い取ってもいいのだろうか? 奪い取らないとすれば、射手座の日というエピソードがまるまる消滅してしまう。あれは、コンピ研の復讐が発端だったからだ。長門がその能力を遺憾なく発揮する機会も失われてしまう。 だが、奪い取ると、当然恨みを買い、朝比奈さんの胸がコンピ研部長氏にトラウマを生むことになる。 うーむ、どうしたものか。 『自分たちで買う』 それでいいのか?長門。 『問題ない。涼宮ハルヒが、パソコンを得るために、朝比奈みくるを利用することは、現時点では考えにくい。だが、パソコンは必要。だから買う』 まあ、長門がいうならそうだろう。だが、資金がないぞ。 『ある。十分な資金を私は持っている』 統合なんたらのくれた小遣いか? 『違う。競馬で当てた。超大穴、ハレハレユカイに10万円を投資』 こ、今世紀最大の大穴と言われていた、あの馬か!しまった、気が付かなかった。 『非常に儲かった』 ……長門、やることはきっちりやっているな。 『明日までにパソコンを設置しておく』 翌日、見事に最新機種のパソコンが設置され、長門の手によってホームページも作られていた。 やれやれ、これでカマドウマ騒ぎはしなくて済みそうだ。よけいな仕事がなくなって、きっと喜緑さんも喜んでいるだろう。 ある日のハルヒと俺の会話。 「あと、団に必要なものはなんだろうな、ハルヒ」 「さあね、これ以上女の子はお断りよ」 「ぐうっ……謎の転校生とかはどうだ?」 「それが女の子ならお断りよ」 「……安心しろ。イケメンのエスパー少年だ。ホモだが」 「あんた、そっちの気はないでしょうね。たとえ男でも、あたしは自分の彼氏に言い寄る奴はぶっ潰すからね」 「俺は真性のヘテロ・セクシュアルだよ。」 「そして真性のアホってわけね。ま、そこがいいんだけどね。キョン、あんたのお弁当もつくってきたから食べましょ。はい、あーんして」 「ちわー」 俺が部室に入っていくと、すでに長門と朝比奈さんが来ていた。ふう、と息を吐いて、俺は椅子に座る。 果たして、元の時間に戻れるのかね。最近、その目的を忘れがちだ。 なんたって、一年前の繰り返しのはずが、どんどんずれている。SOS団の活動二年目のような気さえしてくる。そのせいか、もとの時間に戻らなくては、という危機感がわかないのだ。 長門はいつものように本を読んでいる。こいつは記憶を持っているから、落ち着いたもんだ。一方、朝比奈さんは、ハルヒというより、むしろ俺を少し警戒しているようだ。狼にでも見えるのかね? 「やっほー」 ハルヒがでかい紙袋を提げて入ってきた。満面の笑み。はて、どこかで見た様な…… 記憶の奔流がフラッシュ・バックする。 しまった、今日はハルヒがバニーガールの衣装を持ってきて、朝比奈さんとチラシ配りに出かけ、朝比奈さんが泣き出すというあの日だっ! 説明的なセリフを心の中で叫ぶ。……あれ、ハルヒの持ってる袋が三つだ。 「ハルヒ、それ、中身はチラシか?」 「は、チラシ?そんなのあんたが作って配ればいいじゃない。あたしが持ってきたのは、こーれ。じゃああああああん」 やはりバニーだ。おや、バニーは一着だけで、次に出てきたのはメイド服、そしてチアガール、巫女さん、ナース、スチュワーデス、スクール水着、OL風の服、浴衣、ゴスロリ、ウエイトレス、鞭つきのは女王様、拘束具つきのは奴隷か。 「あんたが何属性なのかわかんないから、とりあえずいろいろネット通販で揃えたのよ。じゃあ、まずはバニーね。キョン、着替えるから後ろ向いてなさい。振り返ったら死刑だから。……ま、ちらっとだったら見てもいいわよ」 ハルヒは制服をするすると脱ぎだした。俺は慌てて後ろを向く。 おい、それ全部自分が着るのか?というか、どこからそれだけの服を揃える金が出た。 俺は後ろを向いたままハルヒに尋ねる。 「有希がくれたわ。活動費だって」 そろそろと視線を動かして、本に没頭する長門の方を見る。 「競馬。超大穴、エスパーマッガーレに、ハレハレユカイで得た資金を投資。また大儲け。」 あ、あの今世紀二番目の大穴の馬か! 「さらに、その資金を、超大穴、ミラクルミルクに投資。またまた大儲け」 あ、あの今世紀三番目……以下略だ。 「……笑いがとまらない」 ああ、長門も壊れていく。無表情で笑いが止まらないって、どんな状態だよ、長門。 「さ、できたわ、キョン!こっちむいて、欲望に悶えなさいっ!!」 やれやれ。スタイル抜群、完璧なバニーガールが、満足げに俺を見つめていた。 翌日、涼宮ハルヒの名前は、全校生徒の常識になっていた。 こともあろうに、ハルヒがバニーコスプレをいたく気に入り、その格好で俺と腕を組んで帰ったためだ。ハルヒの大きな胸が腕にあたって気分は上々、じゃなかった、俺は真っ赤になっていた。 「ウブねぇ、キョン!」 なーんて言いながら、ハルヒは俺の腕をとって嬉しそうに歩く。 ところで、朝比奈さん、なんでメイド姿で下校なんですか。 「なんだか気に入りましたぁ。これから、私、部室ではこれ着てますね」 長門、ちょこんとした巫女さんは可愛いが、それで帰るつもりか。 「……そう」 こうして、ぞろぞろとコスプレ集団が一斉に下校し、SOS団の名前は校内に轟いたというわけだ。 翌日の教室。 「キョンよぉ……、どうやったらあんなハーレムが作れるんだ?涼宮に朝比奈さんだけでもすげぇのに、俺的美的ランクAプラスの長門有希もいたじゃねえか……」 谷口が羨ましげに言う。眼鏡なしの長門は、Aマイナーから二階級特進したようだ。 「昨日は驚いたな。キョンが可愛い女の子三人に囲まれて、しかも、みんなコスプレしてるんだもの。メイド姿の朝比奈さんや、バニーガールの涼宮さんもよかったけど、巫女姿の長門さんも、素敵だったなぁ」 国木田も遠い目をする。 「なあ、キョン、ぜひ俺もそのSOS団に入れてくれ、頼むっ」 いや、まあ、すまん谷口。いろいろと厄介ごともあるんだ、こう見えて。そのうち、驚天動地の事件が起きて、俺は命を狙われたりするんだよ。 「ぶっそうなこと言わないで」 ポニーテールを揺らして、朝倉涼子までやってきた。いや、それはお前が……あ、この時間の朝倉は人畜無害なんだっけ。たしか長門がそう言ってたな。 「キョンくんに、なにかあったら……あたし……」 朝倉はそういって俯いた。 ……可憐だった。 そうこうするうちに、待望の転校生がやって来た。 まあ、そんなに待望していたわけではないが。ともかく、これでSOS団のデフォルトメンバーが勢ぞろいすることになる。いやあ、最近、お前のことをすっかり忘れてたよ、古泉。 とりあえず、九組にいって古泉を探す。 どれどれ……人だかりができている。あの輪の中に、古泉がいるんだろう。 「おい、古泉一樹」 俺は人だかりの方に声をかけた。 「なんでしょう?はて、あなたは、どなたですか?」 すぐ教えてやるさ、エスパー少年。 ……………… 「いやあ、驚きですね。この一年が繰り返しているなんてぜんぜん分かりませんでしたよ」 「まあ、そうだろうな。俺と長門有希以外は、みんな記憶を上書きされたから」 「なるほど……わかりました。僕もSOS団に加わらせていただきましょう」 ああ。そうしてくれ。これで役者がそろった、ってやつだ。 ……………… 「おまたせ、あー、こちらが謎の転校生君だ」 古泉は、例のハンサムスマイルを浮かべて挨拶した。 「古泉一樹です。よろしく」 じぃーっとハルヒが見つめる。 「あたしが涼宮ハルヒ。こっちで本を読んでいるのが有希で、この可愛い子がみくるちゃん。……古泉くん、ひとつだけ忠告しておくわ。」 「はい、なんでしょう?」 「……キョンに手をだしたら死刑ね」 やれやれ、実に物騒だ。 古泉も笑って肩をすくめる。 「ご心配には及びませんよ。僕には、ちゃんと決まったパートナーがいますから」 古泉の発言に、ハルヒはほっと胸をなでおろしたようだ。 「ふーん、そう、じゃあいいわ。それ、前の学校の人?」 「ええ、彼は教員でしたが。」 部室の空気が一気に凍りついた。全員、どうにも気まずくなって、その日の活動は終了した。 その晩、ハルヒから電話がかかってきた。 『キョン、明日土曜日でしょ、一緒にデートしない?』 ああ、そうか土曜日か……はっ、また忘れるところだった!不思議探索をやっていない。 『不思議を探しにいく?まあ、楽しそうだけど……あたしは単にデートがしたいんだけどな』 あー、それは日曜にしようぜ。 『ま、いいわ。あんたがそう言うなら!じゃ、駅前に集合でいいかしら?』 ああ。じゃ、また明日。 『じゃね、愛してるから、キョン。おーばー♪』 顔が赤くなっちまった。なんだか無性にテレながら、長門、朝比奈さん、古泉に連絡をいれ、不思議探索は決行と相成った。 とはいえ、たいしたことがあったわけじゃない。当たり前だが、特に不思議なことも見つからず、組み分けではハルヒが俺を独占した。ハルヒは実に上機嫌で、俺との散策を楽しんでいた。 長門、朝比奈さん、古泉の三人がどうしていたかは知らん。仲良くやっていればいいのだが。 翌日は、遊園地でハルヒとデートした。二人で乗り物を乗り回し、二人とも豪勢に買い物したが、長門が十万単位で活動費をくれるので、一向に苦にならない。 帰り際、少しはにかみながら、ハルヒが俺にキスをした。 うーむ。 閉鎖空間でファーストキスのはずなんだが。 予定がどんどんずれていくな……これでいいのだろうか? あるいは、閉鎖空間に俺とハルヒがいくことがないとか? さて、今日は、懸案事項を片付けなくてはならない。 下駄箱に入っていた、呼び出しの手紙だ。差出人は書いていないが、朝倉涼子であると考えて、まず間違いないだろう。 長門が再構成したので、普通の女子高校生になっているはずだが……こういう行動は一年前と変わらないから不思議だ。 『大丈夫。彼女があなたに危害を加えることは有得ない。私とは独立して行動しているため、その意図は不明だが、あなたの安全は保証できる』 ありがたい長門の言葉をいただいて、放課後、俺は教室に向かった。 「遅いよ」 朝倉涼子が教壇に立っていた。 「やはりお前か……」 「そ、分かってたの?……入ったら」 俺は教室に脚を踏み入れる。長門のお墨付きがあるとはいえ、やはり体は恐怖を覚えているのか、動きがぎこちない。 「人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』って言うよね、これ、どう思う?」 「ああ、よく言うな。」 たとえば、一年前のお前とか。 「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するだけではジリ貧になるのは解っているけど、どうすれば状況がよい方向に向かうことが出来るのか解らないとき。あなたならどうする?」 日本経済の話ではないな、もちろん。言ってみただけだ。 「とりあえず何でもいいから変えてみようと思うんじゃない?どうせ今のままでは何も変わらないんだし」 「まあ、そういうこともあるかもしれん」 「でしょう?」 朝倉は、なんだか泣き出しそうな顔で微笑んだ。 「だから、変えてみようと思うの」 朝倉が俺に向かって飛びついてきた。とっさに体が逃げようとするが、反応が間に合わない。俺は朝倉に押し倒され、床に倒れこむ。おい、長門、安全なんじゃないのか!? だが、朝倉はナイフを振りかざすでもなく、俺の体に馬乗りになっている。形のいいポニーテールが揺れている。朝倉涼子の顔が赤い。 「好きなの」 へっ? 「キョンくん、大好き。お願い、私のことを抱いてほしいの!」 朝倉が俺の体に抱きつく。大きな胸が押し付けられて、朝倉の体温が伝わってくる。 「ままま、待てっ!!」 俺は何とか朝倉の体を押しのけた。 「すまん、気持ちはありがたいが、俺には応えることができない。誰かもっといい男をみつけてくれ、お前ならすぐに見つかるさ!」 「うん、それ無理。だって……私は本気でキョンくんのことが好きなんだものっ」 朝倉の瞳から一筋涙がこぼれた。 「もう、耐えられないよ……あなたは可愛い女の子たちに囲まれて……あたしのことなんか見てもくれないっ……えぐっ……あなたが好きだから、ポニーテールにもしたのに……えぐっ……気がついてもくれない……うわああああああん……」 朝倉涼子は泣き出してしまった。ど、どうする? とっさに、俺は朝倉を抱き寄せていた。頭を撫でて落ち着かせようとするが、朝倉はますます泣き出す。 「あ、朝倉、その、落ち着いて――」 がらっ 「ういーっす。Wawawa忘れ物……うぉわ!」 谷口……なんてまあ、お前はどんなタイミングで入ってくるんだ。 「すまん。……ごゆっくりぃぃぃ!!」 泣きながら谷口は帰っていった。ああ、どうすっかなぁ。俺はまた深い深い溜息をついた。 「キョンくん……」 いつの間にやら泣き止んでいた朝倉が、熱っぽい目で俺を見つめる。 「あたしも……SOS団に入れてくれないかな?お願い……せめて、あなたの側に居たいの……」 潤んだ瞳に見つめられて、思わず承諾してしまった俺を誰が責められよう。 こうして、SOS団に新たな団員が誕生した。朝倉涼子、AAランク+の美人委員長キャラである。 いいのか?やばいか?これは……。 翌日。 ハルヒはおもいっきり不機嫌オーラ全開だった。 原因は、言わずとしれた、朝倉涼子の加入である。 朝倉は、朝比奈さんとお揃いのメイド姿で、甲斐甲斐しくお茶を入れたり、部屋の掃除をしたり、お菓子を出したりと働きまわる。 そして、俺と目が合うと、照れたような微笑みを送ってくる……可愛い。なんといっても、AAランク+は伊達じゃないし、性格までいい。その上、ポニーテールだ。 一方、ウサギさんは非常に不機嫌である。 古泉が居ないのは、閉鎖空間が大発生しているのだろう。 このため、俺は、不機嫌なバニーと、忙しく働く二人のメイド、無口に読書を続ける文学少女に囲まれて、一人、椅子で体を固くしている。 「狭いわ、この部屋。ちょっと団員が多いんじゃないかしら?」 ハルヒ、そう露骨に朝倉をいじめるな。朝倉が俯いて泣きそうになってるぞ。かわりに古泉が居ないんだから、普段よりも多いことがあるかよ。 「問題ない」 長門が本から顔を上げた。 「コンピ研は、すでにSOS団の勢力下に入った。いずれ、夏休みまでには工事を行って二つの部室をつなげる」 「おい、いつの間に?コンピ研は承諾したのか?」 「問題ない。……すでに私が部長になっている」 長門のやつ、コンピ研を乗っ取りやがった!いつのまに。 ……まあ、それはいいとして、工事なんて、どこからそんな大金が出るんだ?まさか学校からじゃないよな。 「私が馬主となっている、サイレントユキがレースで活躍中。賞金が膨れ上がっている。工事のお金など、実に些細なこと」 最近、新聞を賑わしている無敵の競走馬が、まさか長門のものだったとは……。 道理で、この部室が豪華になっていくわけだ。エアコン、冷蔵庫、全員分のノート型パソコン、大画面の液晶テレビ、絨毯など、加わった備品を上げればきりがない。 長門の椅子も、粗末なパイプ椅子から、非常に豪華なふかふかの椅子に変わっているしな。 ちょっと機嫌を直したバニーさんが、俺のとなりに腰を下ろし、ぴったりと俺に体を寄せる。 「有希、だったらベッドも欲しいわね。夏といえば泊り込みだもの!あたしとキョンのは、ダブルベッドでお願いねっ」 朝倉が、ピクッと体を固くした。バニーとメイドの間で、パシッと火花が散る。 うう、毎日が修羅場だ。胃に穴が開きそうだよ、俺は。 SOS団の活動って、こういう感じだっけ?ある意味そうかも。 もはや軌道修正は不可能みたいだ。 『私は非常に満足している。サイレントユキも絶好調。獲得賞金額は鰻の滝登り』 いや、満足しちゃまずいだろ。まだループの原因がわかってないぞ。下手すれば、この一年をまた繰り返すことになるぜ。 『あなたに託す』 おい、面倒くさがるなよ、長門! 『まだ、消化すべきイベントが残っている。涼宮ハルヒの閉鎖空間。あなたがそこに行けば、ヒントがつかめる……そんな気がする』 なんだか適当だな、お前らしくもない。 『それより、今週の日曜は図書館。予定を空けておいて』 やれやれ、わかった。 それにしても、ホントに閉鎖空間は発生するのかね? だが、しっかりと閉鎖空間は発生した。 「キョン、起きて……起きなさいっ」 「う……ここ、どこだ?」 俺は制服姿のハルヒに起こされた。いや、まあ、見覚えはあるさ。文芸部室の窓の外に広がっている灰色の空。 閉鎖空間だ。 やれやれ、これでハルヒにキスすれば、全部のイベントが終了だ。なんというか、非常に長かったな。 「なんなの、ここ?なんであたしはキョンと二人きりなの?」 神人や古泉が出てくる前に、さっさと終わらそうか。 「ハルヒ」 俺はハルヒの肩をつかんだ。 「なに、キョン?」 「実は、俺、ポニーテール萌えなんだ」 「知ってるわよ。だからあたしがポニーにしてるんじゃない」 ぐっ、と詰まるが、言葉を続ける。 「お前のポニーは、そりゃもう反則なまでに似合っているぞ」 「そ、そうかな?ありがと、キョン。嬉しいな、そう言ってもらえると」 ええい、調子が狂いっぱなしだ!ままよ、と俺はハルヒにキスをした。 「んっ……」 ハルヒはどんな表情をしているのだろう。目を閉じているために、俺には分からないが。 「んくっ……」 そろそろ、ベッドから落ち、頭に衝撃が走って俺は目を覚ますのだ。 「んぷ……ちゅる……」 あれ、おかしいな……いつまでもハルヒの唇の柔らかい感触が消えない……。 「ちゅる……ちゅぷ……んん……ぷはっ」 俺は愕然として目を開けた。眼前には、顔を上気させたハルヒがいる。 「うれしい……キョン、とうとう自分からキスを求めてくるなんて……やっぱり、あたしのことを選んでくれたんだ……もう、どれだけ待たせたとおもってるのよ!」 ハルヒはしっかりと俺を抱く。おかしい、おかしい。 「キョン、大好きよ!!」 やばい、やばい、やばい。こいつはまずい、まずいぞ。ど、ど、どうすればいい? 「ちょ、ちょっとトイレ!」 「もお、じらすんだから……早くしなさいよ?」 ハルヒは、しゅる、とスカートを脱いだ。色っぽい目つきで俺を見つめる。 「……用意して、待ってるから、ね」 俺は部室を飛び出した。どうする、どうしたらいい? とりあえずコンピ研の部室に飛び込む。どこのパソコンでもいい、長門とコンタクトを取らなくては。 ふと、窓の外を見ると、赤い光が浮かんでいる。それは次第に古泉の形をとった。 「いやあ、仲間の力を借りて、やっとここまで――」 俺は窓をピシャッと閉める。いずれにせよ、古泉がトイレットペーパーで出来た傘並みに、まったく役に立たないことは間違いない。 窓を叩きながら、まだなにか言いたそうな古泉をほっといて、パソコンの電源をいれる。 黒い画面。やはり一年前と同じだ。カーソルが動いて文字を紡ぐ。 YUKI.N> みえてる? 『ああ』 見えてるぜ、長門……。 『どうすりゃいい?』 YUKI.N> 涼宮ハルヒは、あなたとのキス以上のものを望んでいる。これは確か。したがって、その世界から帰還するには、彼女の欲求を満足させることが必須。 『神人はどうする?あいつが部室を壊したら……』 YUKI.N> おそらく現れない。涼宮ハルヒは、行為の最中に邪魔が入ることを望まない。 『なるほど』 YUKI.N> まだ図書館に行ってない。約束。帰ってきたら、夕食にカレーを振舞う。 『楽しみにしておくさ』 YUKI.N> そして、そのあとは、私の部屋で 文字が薄れて消えていく。思わず、パソコンに手をかける。 「おい、長門っ!!」 最後に長門の打った文字が短く、 YUKI.N> sex 俺は頭を抱えた。 長門……これは、俺とハルヒのするべき行為の指示なのか?それとも、前の文章につながるのか? 俺は、震える手で文芸部室のドアを開けた。 「遅かったじゃない」 そこには、ハルヒが、一糸まとわぬ姿で立っていた。髪だけは、ポニーテールのままだ。 「ふふ、緊張してるの?」 してるとも。なんたって、俺に世界の運命がかかってるからな。 「やだ……そんなにまじまじ見ないでよ……」 ハルヒが恥ずかしそうに手で大きな胸を隠す。胸を隠して股隠さず…… 「す、すまん!」 無性に恥ずかしくて、俺は俯いた。急激に頭に血が上るのが分かる。 「キョン……こっち、こないの?」 すまん、足が緊張で固まっちまって動かないんだよ。情けない話だが。 「じゃあ……あたしが行くね」 ハルヒがゆっくりと近づいてくる。ハルヒの白い肌が妙にくっきりとして鮮やかだ。 顔を赤くしたハルヒが、俺のブレザーのボタンに手を伸ばした。 「ま、まて、自分で脱ぐから」 「……うん」 俺は震える指でボタンをはずし、服を脱ぎ捨てた。トランクスを脱いだとき、横目で見ていたハルヒが、ビク、と体を震わせて、あわてて後ろを向いた。 「お、男って、みんなそんなに大きいの?それとも、キョンのが特におっきいの?そんなの……は、入るのかしら……」 いや、特別俺のが大きいというわけではないと思うが……やっぱり初めて見るのか?ハルヒ。 「エロ本以外では、初めて……」 「……じゃあ、お前のも見せてくれないか?」 こうなったら、なるようになれだ。ハルヒは、神妙な顔でコクンと頷くと、ピョン、と机に座って、足をそろそろと広げた。手を伸ばし、自分でピンク色をしたそこを指で広げてみせる。 「触っても、いいか?」 「……やさしく、おねがい」 おそるおそる手を出す。熱くなったそこに触れた瞬間、んっ、とハルヒが呻き声をだした。 ……もうしっかり濡れているみたいだ。 「その……あんたを待ってる間、我慢できなくて……自分で……だから、もういつでも入れていいよ……準備、出来てるから」 「分かった」 俺はハルヒを抱き上げると、ゆっくりと床に下ろした。床には長門が買ってきたふかふかの絨毯が敷いてあるので、肌に心地よい。 「キョン……大好き。ほんとに大好き。……愛してるから」 ハルヒが目を潤ませて言う。 「俺もだ……ハルヒ、大好きだ」 ハルヒの両足を広げ、ハルヒのそこに自分の息子をあてがう。 ぬる、とハルヒの中に入っていく感触がある。すごく中は熱くて柔らかい。溶けてしまいそうだ。 「キョン……来て……中まで……」 「ハルヒ、行くぞ」 ズブ、と俺は腰を入れた。「ああああっ!!」と、ハルヒが叫び声をあげる。 ハルヒ、大好きだ…… ……って、あれ? 気がつくと、周りの景色が変わっている。 文芸部室じゃない。ここは、このベッドは…… 俺の部屋だ。 やれやれ、閉鎖空間から戻ったのか。 俺はふう、と息をついた。よかった、なんとか戻ってこれた。 ……む、俺の横にある柔らかい塊はなんだ? 「うぉわっ!!」 隣で制服姿のハルヒが寝てるじゃねーか!な、なんで俺はハルヒとベッドで二人なんだ? 「キョン……らめぇ……はげしいよぉ……あん……いっちゃうぅ……」 ハルヒ……どんな夢を見てるんだ……さっきの続きか? やれやれ。 ここから先は後日談となる。 といっても、時間のループについては何も解決していないがな。 夜中に目を覚ましたハルヒとの、熱い熱い一夜のせいで、俺もハルヒも寝不足のまま登校しなくてはならなかった。 朝から一緒に腕を組んで、どうみても一夜を共に過ごしたカップルそのものの姿で登校するとは思わなかったな。朝食の時の、母親と妹の視線が痛いところだった。 それにしても、俺のベッドで寝ていた理由を、「寝ぼけたかな?」の一言で片付けたところは、さすがハルヒというべきか。とてつもない大物の予感がするよ。 さて、今日は土曜日、SOS団不思議探索の第二回目だ。 誰一人休むと言い出さないんだから、みんなよっぽど暇なのか、職務に忠実なのか。 俺が駅前に向かうと、すでにほかのメンバーは揃っていた。 いつもの制服姿の長門。手に持っているのは……競馬新聞だな。 ふんわりした私服の朝比奈さん。俺を見ると、にこっと微笑んだ。 デニムのスカートが似合う朝倉涼子。こっちに気がついて小さく手を振っている。 ニコニコと笑う古泉。閉鎖空間でシカトしたことを、少し根にもっているようだが。 そして――涼宮ハルヒ。今日もポニーテールが素晴らしく決まっている。まあ、朝倉もだが。 「キョン、遅いわよ、しっかりしなさい!あんた、団長でしょ!」 そう、そして、SOS団団長――この俺である。 まだまだSOS団の活動は続くのさ。ハルヒの起こしたループの原因を解明しなくちゃならんしな。 まあ、万一、ループの原因がわからないまま、このメンバーで二年目に突入したとしたら…… それも悪くない、だろ? おしまい涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 ループ・タイム
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/249.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >涼宮ハルヒの憂鬱>【MAD】涼宮ハルヒの憂鬱「キョンとハルヒ」【YUKI】】 【MAD】涼宮ハルヒの憂鬱「キョンとハルヒ」【YUKI】 お気に入りに追加する bookmark_hatena このページは YouTube ,veoh,MEGAなどで視聴できる【MAD】涼宮ハルヒの憂鬱「キョンとハルヒ」【YUKI】の 無料 動画 を紹介しています。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) ニコニコ動画 選曲ナイス! このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画MAD 涼宮ハルヒの憂鬱 コメント(感想) 動画【MAD】涼宮ハルヒの憂鬱「キョンとハルヒ」【YUKI】に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4531.html
「うあぁっ!」 この間抜けな悲鳴が誰のものか。時間帯は早朝。場所は俺の部屋である。となると俺しかいない。しかし情けないと思うことなかれ。誰だって目が覚めた時に、半透明の人間がいたらびっくりするだろう?今日は妹が起こしにやってくるだろう時間より、つまり、いつもよりも早く目が覚めた。俺が目を開けたときに最初に見たものは、幽霊だった。 幾分か冷静さを取り戻してみると、幽霊の姿が馴染み深いものだと気づいた。 「スタプラ…?」 そう。その姿は、とある漫画のキャラクターそのままだった。原住民を連想させる筋骨隆々な姿。明らかに人間とはかけ離れた、薄く青い肌。そして俺を見据える真っ直ぐな眼は、漫画で見た「星の白金」そのままだった。…いよいよ、ハルヒパワーは俺にまで及んできたようだ。まさか俺がスタンドを持つことになるとは…。どうせならハーヴェストみたいなのが便利だなー、と日ごろから思っていたのだが。まあなんだかんだで厄介ごとには慣れている。とりあえず学校に行って古泉あたりにも聞こう。やれや… 『君のおっっぱいはっせっかいいち!』 突然携帯が鳴り出した。というか着信音が変わってやがる!…古泉に会う理由がもう一つ増えたようだ。さて、こんな時間帯にかけてくる人物は一人しかいないわけで。 「案の定かよ…」 ディスプレイ表示されているのは、ご存知、涼官ハルヒ。SOS団の団長様である。 「なんだ…朝っぱらから」 「ちょっと!私!超能力者になった!学校!来い!」 日本語を覚えたてのインド人のほうが、まだうまく話せるだろう。が、俺だって前述のとうり厄介慣れはしているんだ。どうやらこの様子だと、俺と同じ――つまり、こいつも『スタンド使い』のようだ。 「そんな事どうでも良いの!早く来いっていってんのよ!?」 「わかったよ!すぐ行く!」 さて家族たちが眼を覚まさぬ中、俺はひっそりとトーストを食べながら、これからの日々に不安と期待を抱くのであった。 やはり早朝というものは気分がいい。だからといって、これから起床時間を早めようとは思わないのだが。 俺はどちらかといえば、特別な力を持つ者の、補助的な位置が良いと言った(思った?)記憶がある。しかし、それが超能力が要らない、と繋がるわけでもない。「スタンド使いになりたい」という願いが一般的ではないにしろ、超能力をほしいと思う事は誰にでもあるだろう。俺はその願いを叶えてしまったのだ。正確には叶えられた、というのが正しいのだが。気分が良いに決まっているだろう?ああ、もちろん性的な意味でスタンドは使わないぜ?…そういった意味なら『メタリカ』のほうが良かったか。いまいち日常生活では役立ちそうにない『星の白金』を眺め、考える。 ようやく学校までたどり着く。こんな時間に来るのは熱心に部活動に打ち込むもの。もしくは只の馬鹿。それぐらいしかない。そのどちらでもない俺は(特に後者は違うと願いたい)ハルヒの靴を確認し…まあお決まりの部室棟へと向かった。 「遅い!」 文芸部…の物だったドアを開けた俺は、本人の確認もされず、いきなり罵声を浴びせられる。呼び出した張本人は、ホームポジションにどっかりと座っている。というか俺じゃなかったらどうするんだ。 「だってあんたしか呼んでないもん」 「ほかの皆は?」 「だってあんたに最初に見てほしかっ……なんでもないっ!」 あー、ゴニョゴニョいってちゃ聞こえやせんぜ?団長さん。 「うるさいっ!それよりあんた『見える』?」 「ああ?見えるって…」 まあ予想通りという奴だ。ハルヒに重なって見えるのは『黄金』に輝くスタンドだった。 「ゴールド・エクスペリエンス…」 「あんた知ってんの?」 何を隠そう、俺はジョジョの大ファンだ。なるほど、そういやお前の名前とあいつの名前…似てたな。 「ふふん。あんたとは話が合いそうね…って『見える』って事にはキョンきさま使えるなッ!」 答える必要はない。ゆっくりと俺の…いやとある海洋学者の物かもしれないものを出現させる。 「スター…プラチナ……ここまではっきりとした形でだせるとは……意外ッ!」 「きさまもおれと同じような…『悪霊』をもっているとは…」 「「………………………………」」 「フフ……」 「……フフフ…」 いや意外な奴と話が合うものだ…。しかもハルヒの読み込みっぷりも半端じゃない。これは久々に『語れ』るなッ! 結局、スタンドが使えるようになる、ジョジョ仲間が見つかる等のため語るだけで時間が過ぎていった。いやそれはそれでとても楽しかったので良かったのだが。授業中に、冷静になり考え直すと、かなりの異常事態の気がする。とりあえず古泉にメールで相談したのだが、 From,古泉 件名,Re 本文.スタンドってなんですか>< イラッとくるメールでした。 To,古泉 件名,Re 本文,簡単にいえば超能力 まあこういう他ないよな…。一般人が考える超能力としては何かずれている気がするが…。 From,古泉 件名,Re Re Re 本文.おや…あなたも僕の世界に来ますか…? 歓迎しますよ! 決して歓迎されたくはない。 To,古泉 件名,Re Re Re 本文,いや、お前とはまた違う能力だ あいつの誘いを華麗にスルーしてやらないとな。 別の意味で『男の世界』な気がしていやな気がする。 From,古泉 件名,Re Re Re Re Re 本文.ようこそ………『男の世界』へ………… 知ってんじゃねーか!! 急に背筋に冷たいものを感じる。絶対あいつはベーコンレタスだ。これだけは確信を持てる。 To,古泉 件名,Re Re Re Re Re 本文,放課後に 長門のごとく、みっじかい文章で話を強制終了。その後、「僕の下もスタンドです」のようなメールが着たが、きっと、スタンド攻撃を受けているのだろうと思いたい。 いつも思うのだが、睡眠ってある意味タイムマシンじゃね? 早朝から叩き起こされたおかげで、睡魔の猛攻撃を喰らい、あっという間に放課後へと。 「待っていましたよ」 俺は本当の『紳士』である。いつだって、ドアにノックは欠かさないし、朝比奈さんへの感謝も欠かさない。その他にも、いろいろと忍耐強く、面倒見のいい人間である。でもさ、キレてもいいだろ?今朝のことからメールのこと、朝比奈さんのエンジェルボイスを期待したのに、エセ紳士が微笑みながら前かがみで見つめてくれば。しかも、頬を赤らめて。 「とりあえず殴らせてくれ」 「いやですね。ジョークですよ」 そう言った古泉は姿勢を正し、ハハハと、とって付けたような笑い声をもらした。部室には今現在、殴れば人を殺せそうな本を読む、寡黙な宇宙人、そして可愛らしいメイドさんが、困惑した顔をしている。後は目の前に立つ、気持ち悪い(きもいじゃないぞ!)エスパー少年、そしてこの俺。平たく言うとハルヒ以外がそこには集まっていた。 「はっピーうれピーよろピクねー!!」 「ハルヒ、おまえなにしてんだ」 やたらご機嫌な団長殿が、鼓膜を破りそうな勢いでドアを開けた。まあご機嫌な理由はわかるが、もう少しドアをいたわってやれ。壊しかねん。 「うっさいわねー、こんなもん壊れるほうが駄目なのよ!」 と言った矢先に、ドアが音を立てて崩れ落ちた。…実際そこまで大げさなものではないのだが、とにかくドアは完全に外れてしまっている。金具から壊れているので、修理すれば何とかなるって問題じゃないだろ。 「おいおいどうするんだ?」 「…ど、どうしよう…キョン」 意外にも、壊した本人は責任からか、非常にあせっている感じだった。しかしまあ、どうする事もできまい。今年度の部費は、これの修理に使われるかな。 「まあ任せてください」 と古泉。こっちに向かってウインクを投げかけてくる。この上なく気持ち悪いのだが、俺としては古泉が何をするかのほうが気になってしょうがなかった。 「行きますよ……ふんもっふ!」 例の気持ち悪い叫びと共に、古泉はドアを殴った。いや正確には、古泉から出現したスタンド、『クレイジー・ダイヤモンド』がドアを殴った。するとドアはするすると元の位置に戻っていく。そして、完全に元通り。 「まさか…お前もか」 「ええ、僕も…そして後ろの二人もです」 ……な、何だってー! そりゃあ驚きは隠せない。某漫画風にも叫びたくなるさ。SOS団全員スタンド使いとはな。…恐るべしハルヒパワー、といったところか。ここからは割合させてもらうが、まあハルヒが馬鹿騒ぎしたのは言うまでもなかろう。ちまみに、まとめるならば、 涼宮ハルヒ ゴールド・エクスペリエンス 朝比奈みくる ハーミット・パープル 長門有希 ストーン・フリー 古泉一樹 クレイジー・ダイヤモンド キョン スター・プラチナ となる。長門はお得意の情報操作とかで、自分の能力は良くわかっているらしいが、朝比奈さんに言って聞かせるのは困難であった。そういう意味では、戦闘向きではない能力を与えたハルヒにGJといってやりたい。そもそも、この事件の発端は、ハルヒの他愛もない妄想から始まり、たまたまその夢を見たため、らしい。正直、スタンドが欲しいなんて思ったのは、一度や二度ではない、今回の件についてはハルヒを責められんな。しかし妄想を現実にする力とか…。寿命一年縮むとかならまだしも無制限だぞ。この力が、中学生の男子に行き渡らなくて良かったとも思わせてくれたな…。 さてあれから数週間。 これといって日常には大きな変化はなかった。意外なもので、スタンドがあるからといって、寝転びながらリモコンが取れるとか、その程度の便利さであった。…後はタンスの裏に落ちたものをとるとか。しかし、そんな日常に大きな変化が訪れるとは…。 「ちょっといいですかキョン君…」 微妙に涙目で見上げてくるのは、SOS団の良心こと朝比奈さんだ。ちなみに時は放課後、場所は部室。いるのは俺とハルヒと朝比奈さん。なんとも意外な組み合わせだろうが、長門と古泉はさっさと帰ってしまった。どうも最近あいつらは仲がいいらしい。まあ古泉はノンケとして、長門は感情を持つという意味で、どちらのためにも良いことなんじゃないか。と、それはおいといて。 「どうしたんです?」 「何かあったの?」 ハルヒも不安らしく、少し困った顔で話に加わった。 「涼宮さんも聞いてくれると嬉しいです…」 ちょっと冗談ではない空気に、俺もハルヒも黙って話を聞くことにした。 「実は、最近つけられている気がするんです…ずっと見られてる感じがして」 ほう、何処のどいつだ?今すぐ血祭り、オラオラフルコースだ。3ページに渡ってやってやるぞ。 「ふーん、何処のどいつ?今すぐ血祭り、無駄無駄フルコース。7ページに渡ってやるわよ」 なんだか、ハルヒと全く同じ思考回路をしていたみたいだな。この際そんなことはどうでもいい。ストーカー野郎をフルボッコにするほうが先決だ。 「念写もしてみたんですけど…」 そういって、朝比奈さんは鞄から写真を取り出した…が、そこに写っているのは電信柱とかで、誰も写ってはいない。写真が存在するってことは、犯人は存在していることになる。しかし、これは一体どういう事か…いや考えるまでもない。 「スタンド使い…か」 写真の電信柱にはかすかに、歪みのようなものがあった。これは…つまり。 「…みくるちゃん?今日はあたし達が家まで送るわ」 「…あ、ありがとうごさいますっ」 透明になる能力…まさか俺が冗談で言ったことが、マジになるとはな…。 なるほど確かに。 俺は朝比奈さん、ハルヒと共に下校をしている。美人を二人連れて、両手に花状態でも、浮かれる場合ではなかった。明らかに痛いほどの視線が、背中に突き刺さる。そして、吐き気を催すほどの『邪悪』が。ハルヒもそれを感じ取っているらしく、真面目な顔で歩き続けている。あと少しで朝比奈さんの家らしい。そういえば初めて、朝比奈家を訪れることになるな。 「ここです」 と指差した先には、まあそこそこのマンション。長門のところほどではないが、女の子の一人暮らし?なんだ、オートロックなどは揃っていそうな感じであった。 「じゃあ、ここまでありがとうございました」 そういって朝比奈さんはエレベータへ乗り込み上の階に上がっていったのだ。何階に住んでるのかなんて知らないが、ひとまず俺たちに出来るのはマンションの敷地に入れないことだ。『奴』をな。 「出て来なさいよ」 ハルヒの呼びかけは虚しく、夕焼けの街に染みていった。マンションは高台にあるようで、町を見渡せるいい場所だった。きっとこのマンションの住人は得しているだろう。俺はこの風景をみると、どうも人の信頼関係を利用しようとした宇宙人が出てくる。何も真っ二つにしたうえで、エメリウム光線打たなくてもいいのにな。 「出て来いっていってんでしょう!」 語気を強めてハルヒがいうと、少し殺気というかなんというか、まあそんな感じのものが強くなった。俺はその殺気の元へと近づいていく。すると突然、腹に鋭い痛みが現れた。 「くっそたれ…大当たりかよ!」 予想通り。俺の腹からは、制服を突き破り、とがったナイフのような物が顔を出していた。つくづくナイフには悪い縁のある俺だな。と自嘲気味に笑った。がしかし、いきなり攻撃してしたってことは、方向は間違っていないようだ。 「スター・プラチナ…ザ…ワールド」 胃に穴が開く思いってのは、SOS団で散々したと思っていたが、実際はありえないくらい痛い。いやこの慣用句はそういう意味じゃないんだが。…俺が時を止めていられるのは、一秒弱。『メタリカ』は常に背景にとけこんでいる。じゃあ時が止まっているならどうか?周りの景色に対して透明になっているわけではないなら、そこに歪みが僅かに出来るはずッ! 「そこだッ!スター・プラチナッ!」 歪みに向かって拳を突き出す。鈍い音を立て、相手の顔の形が変わっていく。口の中でも切ったのか、血が拳に付着する。 「…時は…動き出すッ!」 殴った相手は大きく吹っ飛んでいき、公園のなかの砂場に飛び込む。幸い、公園には人影がまったく見当たらんな。 「…ッ!キョン?大丈夫!?」 砂場の土煙に気づいたハルヒが驚きの声を上げ、俺の傍による。正直、ぜんぜん大丈夫じゃない。腹が痛くてしょうがない。気を抜いたら即効で昇天しそうだ。 「…ハルヒ…すまん……ちょっとやべ」 「…ったいなぁ…君たちが、僕とみくるちゃんの愛を邪魔する権利はないはずだよ?」 おお、喋るのか。てっきり無口な奴かと思った。いかにもストーカーですっ!といった、ボサボサの髪の毛に、黒尽くめの服装。明らかにヤバイ奴である。酒の名前はついてないだろうが、それなりの迫力はあった。でもまあ、 「黙れよ…二度と喋んな」 俺の自慢の低音ボイスで相手を威嚇。意味はないかもしれないがな。先の攻撃はダメージこそ与えはしたが、致命傷にはならなかったようだ。奴の姿は消え、不気味な気配だけが辺りを包んだ。 「だいだいみくるちゃんを愛してるのは僕だし、愛せるのは僕だけなんだ」 「黙れ…とキョンがさっき言わなかった?二度も言わせるなんて、あんた馬鹿でしょ?みくるちゃんには関わらないで!」 「…君は誰だい?みくるちゃんと気安く呼ぶな!」 きっと攻撃がくると思いハルヒの前へ出る。当然、大量の剃刀を吐き出す結果になるわけなんだが。 「キョ、キョン!何やってんの!?」 仕方ねーだろ。無意識に動いていたんだ。そんな事に文句…言……やべぇ確実に鉄分足りねぇ。頭がボーッとしてきた。 「…ッ…いいかハルヒ…お前だ……お前がやるんだ」 「そんなことより早く血を作んないと!」 「すぐには間に合わん……俺じゃあ…あいつに止めをさせない…お前なんだ」 「何言ってんのよ!あんた死んじゃうのよ!」 ずっと泣きじゃくるハルヒを見るのは新鮮だったし、可愛かった。そうだ、まだ俺は死ぬわけにはいかん。SOS団の皆と、ハルヒと、思い出をまだ作んないといけないからな。 「いいか…俺はあいつを思いっきり殴ったんだ……血が出るほどにな」 「……!」 「どうしたの死んじゃうの?フヒヒ!死んじゃうんだぁ!」 例によってムカつく声を聞きながら、ゆっくりと俺は目を閉じた。 「キョンの『意志』は継がなくてはならない。あたし達が、笑ってまたSOS団を楽しむには、ここでこいつをたおさなくてはならないッ!わかる?あたしの『覚悟』が!」 あたしは、ひとまずキョンの血を作った。さてこれからどうするかだけど。…勿論やることは決まっている。キョンが残した、あいつの血からハエを作る。ハエの行き先からあいつの場所を特定しようと… 「知ってる?鉄分って誰でも持っているんだ。たとえ虫でもね!」 「分かんないの?あたしは確かな『意思』をもって動いてんのよ?」 迷わずにあたしは一方向へ。あらかじめ何匹ものハエを飛ばし、その中で最初にやられたハエの方向に走っていくだけ、方向は『大体』で構わない。 「意味ないんだよォォォォ!食らえッ!!」 あたしの伸ばした右手からはさみが飛び出そうとする。が、無駄。右腕を切り落とし、磁力で引っ張られるほうへと、確実にあいつに近づいていっているはずだ。後一歩…ここだッ! 「『覚悟』を持ってるんでしょ?あたし達を殺そうとするならねッッ!食らえ『ゴールド・エクスペリエンス』ッ!」 左の拳が届く直前に、腕に針やら、ナイフやらがこれでもかと作られた。当然の結果、この拳は届くはずもない。ゆっくりとあたしは崩れ落ちる。でも大丈夫…だって 「…『覚悟』はいいか?俺は出来てる」 ハルヒが崩れ落ちる瞬間。俺は再び時を止めた。ここまで追い詰めれば遠慮することはいらない。さて、3ページやらしてもらうかな 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!」 相変わらず、腹が痛むがとてもさわやかな気分だ! 「えへへ…ありがと…キョン」 「無茶しすぎだ!死んだらどうするんだ!」 「だいじょーぶ……ちゃんと生きてるじゃない」 「…それは結果論だろ?はぁ…」 「えへへ…」 「「やれやれだぜ」」 今回の件についてだが、結局犯人の身元は機関で預かるそうだ。まあ警察では裁けないからな。しかし、他にもスタンド使いがたくさんいると思うと寒気がしてくる。 さて、どうして俺が立ち上がったのかだが、答えは、最初から俺は気絶などしていなかったんだ。まあ、いわゆる死んだ振りって奴だ。…そこ、物投げない。大体、俺は目を閉じたとはいったが、気絶したなんて一言も言ってねえぞ。…だから物投げんなって。そもそも作者が頭悪い上に、文章力皆無なんだよ!だからな? 「すげー!サルが文章書いてる!」 ぐらいの気持ちでみてくれよ。な?
https://w.atwiki.jp/thefool/pages/26.html
ハルヒ 19歳/181cm/大柄 フレイと一緒にいる双子の弟。姉・カスガとフレイに振り回 されている。レッドコメット団の印である黄色のロングスト ールは腰に巻いている。3人の中では一番常識人。 元々孤児であったのを姉と一緒にフレイの父親に拾われた。 フレイに密かに恋心を抱いているが言い出せないでいる小心 者。 ◆◆◆◆◆
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1876.html
言わせて貰うなら、セックスなんてのは単なる行為のひとつに過ぎない。少なくともあたしはそう思ってる。 愛情がなくったって出来るし、何の証明にもならない。セックスしたから彼はわたしの物♪なんて、おかちめんこな考え方は噴飯物だ。一時の気の迷いで、そうひょいひょいと人の所有権を移動させないでほしい。 結局その考えは、あたしこと涼宮ハルヒが実際にセックスを経験した後も、特に変わる事はなかった。だからやっぱり、セックスなんてただの行為なのだ。 「おっそーい! キョンの奴!」 一年を4分割するのなら9月は秋に分配されて然るべきはずなのに、その日は朝から猛烈に暑かった。残暑なんてものは馬の尻尾にくくりつけて、そのまま蹴っ飛ばしてしまいたい。 実際にはくくりつける事も蹴っ飛ばす事も出来ないので、あたしは腕組みをして駅前広場の時計を睨みながら、ひたすら不機嫌な声を張り上げていた。 「ホントにもーっ、何やってんのよ!」 「まあまあ涼宮さん。まだ待ち合わせ時刻から10分ほどしか経っていませんし」 「他のみんなはもう集まってるでしょ!? せっかくSOS団の末席に加えてあげてるっていうのに、団員としての自覚が足らないわ! だいたいね? 下っぱのキョンが団長であるこのあたしを待たせるだなんて、まったくの論外よ! ロンのガイよ!」 あたしの怒声に、古泉くんは参りましたねと肩をすくめるばかりだった。あー、何か違う。やっぱり古泉くんが相手だと何かこう、しっくり来ない。これはもう今日は徹底的にキョンの奴を吊るし上げなけりゃだわ! 「うス。すまん、遅れた」 噂をすれば何とやらね。しょぼい顔してやってきたキョンを、あたしは出来うる限りの厳しい眼光で迎えてやったわ。 さー、どうとっちめてやろうかしら。明らかに寝不足っぽい顔しちゃって、どうせまたつまんない理由で夜更かしでもしてたのよきっと。 「理由…言わなきゃダメか?」 「当ったり前でしょ! あんた一人のせいで、あたし達がどれだけ迷惑したと思ってんの!」 「あのぅ、涼宮さん…わたしはそれほど迷惑とは…」 「みくるちゃんは黙ってて!」 「ひゃ、ひゃいっ!」 「これは団の規律の問題なのよ。さあ、ちゃっちゃと吐きなさい、キョン!」 ゲームか漫画か、それとも深夜映画にでもハマってたのか。わくわく気分で問い詰めるあたしに、キョンはむっつりした顔で、こう答えた。 「昨日、中学の同級生だった奴の葬式に行ってきたんだよ」 「そうですか、海難事故で」 「ああ。夜釣りの最中に高波にさらわれて、朝、浜に打ち上げられた時にはもう冷たくなってたとか。人間なんて本当、はかないもんさ」 古泉くんに素っ気なく応じると、キョンはずちゅーとアイスコーヒーをすすり上げた。事故の件を話すのがつらいというより、喫茶店に移ってきてまでこんな暗い話題で雰囲気を盛り下げたくない、といった感じだ。 まあ確かに、日曜の朝に聞きたい類の話じゃない。正直、気分が滅入る。ああ、だからキョンはさっき言いたくなさそうにしてたのか。…って事はなに? 今のしんみりした空気って、ムリヤリ聞き出したあたしのせい? 「でも、キョン! そもそも昨日の時点で用事がお葬式だってこと、なんであたしに言わなかったのよ!?」 なんだか責任転嫁のような感じで、あたしは話を蒸し返していた。そう、本来は昨日の土曜日に定期パトロールが行われる予定だったのに、直前になってキョンが用事があると言いだしたから、一日ずらしてみんな集まっているのだ。 でもってキョンの奴は、あたしが訊いても口をもごもごさせて、何の用事かははっきりと言わなかった。今朝からあたしの気分が優れなかったのも、半分くらいはそーゆーキョンのぐだぐだした態度にイラついてたせいだ。結論、うんやっぱりキョンが悪い! 「最初は、葬式に出る気なかったんだよ。つい直前までな」 あっさりと、キョンはそう白状した。…おかしい、どうも今日は調子が狂う。 いつものキョンなら吊るし上げをくらっても、なんだかんだとあたしに抵抗しようとするのに。その往生際の悪さが見てて楽しいのに。 「1、2年の時に同じクラスだったってだけの奴で、すごく仲が良かったわけでもなかったし。高校も結局、別の所に行っちまったしな。 俺が行って手を合わせた所で、奴が生き返るはずもなし。でも国木田の奴に、焼香くらいは、って誘われてね」 国木田か。なるほど、付き合いのいい方ではあるわね。でも、ちょっと待って? 特に仲が良かったわけじゃあない? 見回せばあたし同様、キョン以外のみんなが頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた(有希はパッと見、そうとは分からないけど)。それならどうして、寝不足になるくらい思いつめたりすんのよ。 「別に今生の別れに一晩中泣き明かしたりしたわけじゃねえよ。ただ、なんて言うかな…。 葬式のあとで、国木田が言ったんだ。なんだか全然、現実味がないねって」 まるでそういう風に話すよう造られた自動人形みたいに、キョンは淡々と語っていた。 「家に帰ってから俺、卒業アルバムを開いてみたんだ。そしたら確かに、一緒の頃の思い出の方が生々しくって、あいつが死んじまったって現実の方が絵空事みたいな感じなんだよ。 でもやっぱり、あいつが居ないこの世界の方が現実で」 ふう、とキョンがひとつ息を吐くと、微かにコーヒーの匂いが漂った。 「実は俺、ほんのしばらく前にそいつと話してるんだよな。下校途中にサンダル履きのあいつと、ばったり出くわしてさ。そのままコンビニの前で30分ばかりくっちゃべってた」 「その人、何か特別な事でも言ってたの?」 「いや、全然。今じゃ内容さえ憶えてないような、そんな程度の会話だった。 でもそれは、あいつとは逢おうと思えばいつでも逢える、話そうと思えばいくらでも話せる、そう思ってたからで。それが気が付いたら、そうじゃなくなってて――。何だろうな、こういう感じ。心にぽっかり穴が空いた、とでも言うのか?」 「ふん、ボキャブラリーが貧困ね」 わざときつく揶揄してやったのに、あいつはムッとした表情さえ見せなかった。やっぱり変だ。やっぱり今日のキョンは、何かおかしい。 「そりゃ失敬。じゃあ教えてくれよ、こういう気分ってなんて表現するべきなんだ?」 「何って、それは…」 「………虚無感」 「おお、さすが長門。ん、まあそんな感じだな」 有希に向かって大きく頷くキョンの顔を、あたしはストローの先のクリームソーダを最大肺活量で吸い上げつつ、仏頂面で眺めていた。 キョム感ね、キョンだけに。…いろんな意味で面白くない駄ジャレだわ。 「そのぅ、えっと…元気出してくださいね、キョンくん…」 「おお、この俺の身をそんなに心配してくれますか! いやあ、朝比奈さんは本当に心優しいお人だなあ」 今のキョンはみくるちゃんの掛けた言葉に、やけに愛想良く受け答えてる。みくるちゃん相手にはやたら調子がいいのはいつもの事だけど…今日はなんだか特に造り物みたいな笑顔ね。無性にはたきたくなるわ。 そんな風に思っていると、キョンの奴は不意にこちらを向いた。 「ま、そんな事がありましたよって事で。人間なんて明日どうなってるか分からないから、みんなもせめて事故とかには気をつけろよな。特にハルヒ」 ちょ!? なんであたしだけ名指しなのよ! 「お前が直情径行の向こう見ずで、後先考えずに動くからだ。 さて、それじゃ不思議探索パトロールに出掛けますかね、と。今日はもう俺の罰金で確定なんだろ?」 恒例のクジ引きで同班になったみくるちゃんをいざなって、キョンは伝票をひらひらさせながら会計へと向かった。 むー。つまんない。あたしは『キョンに罰金を払わせるのが』ではなく、『罰金を払わされる時のキョンの情けない顔が』楽しいのに。つまんないつまんない! 「どうかしましたか、涼宮さん?」 よっぽどあたしはむくれていたのだろうか。喫茶店を出るなり、古泉くんがそう声を掛けてきた。 「ねえ有希、古泉くん。今日のキョン、なんかおかしいわよね?」 遠回しな物言いは好きじゃない。あたしがズバリ訊ねると、古泉くんと有希はしばらく顔を見合わせて、それから二人揃って頷いた。古泉くんはともかく、有希も肯定しているからにはやっぱりそうなのだ。 「そうですね、これはまあ概念的な事柄なのですが。 人は大なり小なり、明日への不安を胸に抱いているものです。もしかしたら大地震が起こるかもしれないし、空から隕石が降ってくるかもしれない。はたまた、悪意を持った異星人が大挙して地球を侵略しに来たりするかも…」 いきなりそんな事を語り始めたかと思うと、古泉くんはしばし、あたしと有希の顔をちらちらと見比べた。今の間は何なんだろう、一体。 「…とまで言ってしまうと、さすがに何でもありになってしまいますが。不慮の交通事故などは、誰の身にだって起こり得るわけです。 さて、そんな時。たとえば明日死ぬかもしれないという時に、やりたくもない宿題をやる気になる人が居ますか? いえ、それどころか自分にとっての宝物さえ、もしも明日無になるとしたら、途端に色褪せて見えるのではありませんか?」 「えっ? でもだって、そんなのは…」 「はい、その通りです。予測できない不幸、というのは可能性としてはあり得るのですが、それを気に病みすぎていては何も出来ません。 だから人は基本的に、その可能性を無視しています。もしくは保険に加入するなどの次善策を用意するか、ですね。しかしながら“死”というのは、人が逃れえない宿命のひとつでして…」 と、ここで一度言葉を止めた古泉くんは、ああまたやってしまったとでも言いたげな微苦笑で頭を振った。まあ、古泉くんのセリフが芝居がかってるのはいつもの事だけど。 「結論を述べましょう。今の彼は、軽い躁鬱病の状態にあると思われます。 ご友人のように、自分も明日にはいなくなっているかもしれない。ならば自分の生に一体何の意味があるのか――そんな問答に囚われてまんじりともできないでいる、といった所でしょうか」 「有希の言ってた、虚無感って奴?」 「おそらくは。実を言えば僕自身、まだ同年代の人間の死に直面した経験はないもので、先程の彼のお話には、多少なりともショックを受けました。もしかしたら『大人になる』というのは、こうしたショックに慣れていく事なのかもしれませんね」 ショックだった割には、いつもと同じ笑顔で話してる気がするけど。そうね、古泉くんが言いたい事はだいたい分かるわ。 でも、だったらあたしは敢えて大人になんかなりたくないかな。親とか身近な人を失くす悲しみに慣れるだなんて、そんな事は………え? 失くす? 誰を? その時のあたしは、どんな顔をしていただろうか。ともかく、気付けばこんな言葉があたしの口をついて出ていた。 「あのさ、有希、古泉くん。ちょっと話があるんだけど」 「はあ、午後の調査を彼と二人で」 「…………」 その、別にヘンな意味じゃないのよ? ただキョンの奴のスッポ抜けぶりが見るに見かねるというか、ほら、団長の責務として…! 「素晴らしい。さすがは涼宮さんだ」 「へ?」 「僕達も彼の不調が気にかかってはいたのです。しかしながら、いかんせんどうやって励ましたら良いものか、妙案が浮かばないものでして。 ですが、団長自らがケアをなさってくださるというのなら、もう安心ですね。どうぞ彼の事をよろしくお願いします、涼宮さん」 ま、任せときなさい! 団員の心の悩みを受け止めてあげるのも団長の務め! 一切合財あたしに預ければ、全てこれ解決よ! と、あたしがガゼン張り切っていると。 「ふむ、ですがそうするには…長門さん、ちょっといいですか?」 古泉くんが有希を道端に連れてって、ひそひそ相談を始めた。ん? この光景、なんとなく前にも見たような覚えがあるんだけど。市民野球大会の時だっけ? それともデジャビュって奴かしら。 「お待たせしました。では、午後のクジ引きは長門さんにお願いする事にいたしましょう。実は彼女、少々手品の心得があるそうで」 「へえ、それ初耳。有希、本当に出来るの?」 「………可能」 「公平公正なゲームを愛する僕としては、こういうインチキはあまり推奨したくはないのですが。 しかしながら彼はある意味、涼宮さんの対極というか、石橋を叩いて渡らないような、非常にアマノジャクな性格の持ち主ですからね。変なお膳立てをしてしまうと、かえって反発しかねません。ここはあくまで偶然を装うとしましょう」 古泉くんの言に、あたしは大きく頷いた。まったく、キョンの奴があたしのナイスなアイデアに、素直に賛同した事など一度もない。いつもつまらない常識論を持ち出して、あたしの発展的行動に難癖を付けたがるのだあいつは。 あんたみたいな奴の事を、これだけ気に掛けてあげるのはあたし達くらいのものよ? 友に恵まれた事をせいぜい感謝なさい、キョン! 「素直じゃない、という点ではどっちもどっちというか、お似合いなんですけどね」 「何か言った、古泉くん?」 「いえ、別に何も」 「ふうん? まあいいわ。今回はウソも方便って事で、有希、お願いね」 あたしの依頼に、有希は黙って頷いた。沈黙は金だとかいうけど、本当にいざという時には頼りになる娘だ。キョンの数千倍は役に立つわね。 って頷いた後も有希はしばらく、深遠の瞳であたしを見続けていた。ん、なに? 「彼の言っていたのはある面での、真理」 彼って、キョンのこと? 「そう。価値観は主に相対性によって生ずる。最初から何も無かった状態に比して、あるはずだったものをなくしてしまった際の喪失感は、絶大」 「あんたにも、そんな経験あるわけ?」 「11日前、帰宅すると作り置きのカレーが、全て痛んでいた。その日はお茶だけ飲んで過ごした。カレーに黙祷を捧げた…」 「そ、そう」 カレーと人命を同列に語っちゃうのもどうかしら。ああ、でも自炊してる人にとっては食料問題は死活ラインなのか。よく分かんないけど。 「決まりですね。では、我々も出発しましょうか」 「あ、うん、そうね」 なんだか分からない内に古泉くんに促されて、あたし達もまた午前のパトロールに出立した。うーむ、やっぱりどうにも調子が狂ってるぽい。いつもなら当然のように、このあたしが号令を掛けているはずなのに。 結局、午前の部はただひたすら暑い中を歩き回るだけに終始した。不思議を探すより何より、あたしの心には踏んづけたガムみたいに、さっきの有希のセリフがべたりとこびり付いていたのだ。 『彼の言っていたのはある面での、真理』 あるはずだったものを失くしてしまって、心にぽっかり穴が空いたようだ、とキョンは言っていた。有希はそれを真理だと言う。古泉くんは、人は大なり小なり、明日への不安を胸に抱いているものだと言っていた。 そうだ、今のあたしも多分、何かしらの不安を抱えている。でも、それは…一体なんだろう? あたしは何を失くす事を恐れてるの? そんな疑念が、歩くたびに靴底で耳障りな音を立てている、ような気がした。 「珍しいな、この組み合わせってのも」 「あー、うん、そうかも、ね」 キョンの何気ない呟きに、午後のあたしはちょっとばかり居心地の悪い気分で頷いていた。本当の事を知ったら怒るかな、キョン。 「つか、古泉の野郎が羨ましい」 前言撤回。このバカ相手に、罪悪感など微塵も感じてやる必要なんか無い。あたしは渾身の力でキョンの尻をつねり上げてやった。 「神聖なSOS団の活動を一体何だと思ってんのあんたは!」 「うぐあっ!? い、いやスマン、冗談だ…」 だいたい古泉くんは、午前もあたしと有希で両手に花だったでしょうが!? どうしてあの時は羨ましがらないで今は………あ、いや。いやいや。 あ、あたしが怒ってるのはそんな事なんかじゃないわ! そう、キョンの奴がここでもやっぱり素直に謝ってるからよ! だから、調子が狂うって言ってるでしょ! いや言ってないけど! いつものあんたなら、もっとこう…その、歯応えがあるっていうか…そこいらのくだらない男連中とはちょっとは何かが違うっていうか…。 「どうしたんだ、ハルヒ? どこに向かうんだか、さっさと決めてくれよ」 こここ、この鈍感男めぇ! 人がこんなに気を揉んでやってるのも知らないでッ! あたしはよっぽど、公園の砂場を掘り返してこの唐変木を頭から埋めてやろうかと思ったけど、今世紀最大の自制心を働かせて、なんとかそれを堪えた。いけないいけない。古泉くんの言によれば、キョンの奴は今、ちょっとばかり精神を病んでいるのだ。団長として大目に見てやらなければだわ。 ――治ったら覚悟しなさいよね、このバカキョン! 「いいからっ! あんたは黙ってあたしについてきなさい!」 「へーへー、団長様の仰せのままに」 とりあえず、そういう事にして歩き始めたけど…はてさて、これから一体どうしたらいいもんだか? 実の所あたしは、本当に有希の手品とやらがうまく行くのかなーとか、行ったら行ったでキョンの奴、あたしとペアの組み合わせをどう思うのかなーとか、そんな事ばかりを考えてたもんだから。具体的にどうやってキョンを元気づけたげようとか、全く考えてなかったのよ! うそ、どうしよう。まるで小堺一機のお昼の番組にいきなりむりやり出演させられて、サイコロ振らされたような気分だわ。何が出るかな♪何が出るかな♪ ちょっとドキッとした話、略して「ちょドばーなー」って、だから何も用意してないんだってばっ! 『団長自らがケアをなさってくださるというのなら、もう安心ですね。どうぞ彼の事をよろしくお願いします』 プレッシャーが具現化したのか、さっきの古泉くんのセリフが耳にこだまする。あたしは空の彼方に浮かんだあの爽やか笑顔に、無言のパンチを打ち込んだ。 『おやおやひどいですねフフフ』 ええい、回想なんだからさっさと消えなさい! 「おい、どうしたんだハルヒ。道端でいきなり拳振り回したりして…?」 「虫よ! 虫がいたのニヤケ虫が!」 語気も荒く振り返って…あたしはキョンの背後の壁に、ふと一枚の看板を発見した。 (あ、やだ…。やみくもに歩き回ってたら、こんな方向に…) 途端、あたしの頬が熱を帯びる。そこは駅の裏手辺りにありがちな一画で、男女がペアで歩いてたりしたら、いわれのない誤解を受ける可能性が非常に高い場所というか何というか…。あーっ、もう! ハッキリ言ったげるわ! あたしにはやましい点なんかこれっぽっちも無いし! ホテル街よホテル街! そこはいわゆるホテル街だったのよ! 「おい、ハルヒ」 その時、いきなりキョンに声を掛けられて、あたしは背中をぴきぴきっと引きつらせてしまった。な、ななな、何よ!? あんたまさか、ヘンな勘違いしてるんじゃないでしょうね! あ、あたしは別にそんなつもりで、こんな所にあんたを連れてきたわけじゃ…。 「実は今、朝見たテレビの占いコーナーを思い出したんだけどな。今日の風水じゃ、こっちの方角は俺にとって猛烈に運勢が悪いらしいんだ、これが」 「え、そ、そうなの?」 「できれば別方向に探索に行きたいんだが。ダメか?」 「そういう事なら、し、仕方ないわね。じゃあ…」 表面上は不服そうな顔をしてたけど、本音を言えばキョンの言葉は渡りに船で、あたしはそそくさとこの場を離れ―― ――ようとして、はた、と疑問の壁にぶち当たった。ちょっと。ちょっと待ちなさいよ、キョン。あんた、今朝はあんなやつれた顔で遅刻してきたんじゃない。朝の占いなんか見てる余裕あったわけ? そもそも、あんたってば占いとかそういう類は否定はしないけど肯定もしないってタイプだったでしょうが。まさか、あんた…。 気が付けば、あたしは奥歯を軋むくらいに噛みしめていた。くやしい、くやしいくやしい! 今は、あたしがキョンの事を気遣ってやらなきゃならないはずなのに…! それなのに、どうしてあたしがキョンに気遣われてるのよ!? 北高に入学したばかりの頃、つまらないつまらないと窓の外ばかり眺めてたあたしに、キョンは何やかやと話しかけてくれた。頬杖をついてふてくされた表情のままだったけど、あたしは内心、それがとても嬉しかった。 だから、だから今日は、あたしの番だと思ったのに…あたしはすごく張り切ってたのに! 実際にはあたしには何の手立ても無くて、逆にキョンに気遣われてる。あたしの尊厳を傷つけないように、自分の都合を押し付けるようなフリまでしちゃって…なに格好つけてるのよ、キョンのくせに! 後になって冷静に思い返すなら、あの時のあたしは、ちょっと普通じゃなかったと思う。小さな子供が親の前で格好良い所を見せようと背伸びするように、ただひたすら、キョンに自分の優位性を誇示したかったのだ。あいつの優しさに甘えてばかりの自分に我慢がならなかったのだ、と思う。 あとまあ本当に本音の事を言えば、この状況で「逃げ」を選択したキョンに、“女”として依怙地になっていたのかもしれない、けど。 ともかく、あたしが求めたのはキョンに対する逆襲手段であり…現在のこの状況、そして今朝からの出来事を鑑みた結果、あたしの頭の中で、ぺかっと何かが閃いたのだった。 そのアイデアに手段、結果推測などがパズルのようにカチカチとはまっていき、たちまちひとつの仮法案になる。あたしの脳内では『涼宮ハルヒ百人委員会』が召集されて、すぐさま“それ”が提議された。 議事堂の半円状の議席にずらりと居並ぶ、スーツ姿のあたし達。その中で、立ち上がったあたしAが腕を振り、口から泡を飛ばす。 「本当に“これ”を採択して良いのですか? あとで後悔する事にはなりませんか!?」 「正直、その可能性は否定できません。ですがもしも採択しなければ、それはそれで後悔する事になるかとわたしは思います!」 あたしAの質疑に、敢然と答えるあたしB。周囲の大多数のあたしの中からは、やんややんやと歓声と拍手。一部では天を仰ぎ失望の息を洩らすあたしや、口をアヒルみたいにしてケッとか呟いてるあたしも。 「静粛に! それではこれより決議に移ります。賛成の方は挙手を」 議長服のあたしがコンコン!と木槌を叩き、採決が始まる。その結果、賛成87票、反対5票、棄権8票で、“それ”は可決されたのだった。 「うん、決めた!」 満足できる結論に達して、あたしは大きく頷いた。自問自答の時間は、正味1分も無かったかもしれない。 ともかく、一度こうと決めたらただちにスタートするのが涼宮ハルヒ流だ。くるりと踵を返したあたしは、キョンの奴が 「ハルヒ? どうかしたのか?」 と小首を傾げた、そのシャツの胸倉を引っ掴んで、真正面からあいつを見据えてやった。制服のブレザーだったら、ネクタイを捻り上げている所ね。 「いい、キョン? 自分じゃ気付いてないんでしょうけど、あんたは今、ちょっとした心のビョーキなの。分かる?」 「はぁ? 何をいきな」 「黙って聞きなさい! だからこれから、あたしがあんたを治療してあげるって言ってんの! いい? 分かったら四の五の言うんじゃないわよ!」 「お、おい待てハルヒ、そこは…」 四の五の言うなと釘を刺したにも関わらず、ゴニョゴニョ言いかけるキョンの呟きを全く無視して、あたしは標的と定めた建物に突撃した。ほとんど拉致みたいな形だけど、仕方がない。正直、あたしは顔から火が出そうでとてもじっとしてはいられなかったし、それに、ありえないと思いつつも万が一、億が一、キョンに拒否られたらとか思ったら、その…。 えーいもう、仕方がなかったって言ってるでしょ!? キョンの奴には主体性って物がまるで無いんだし! あいつの方からあたしをリードできるだけの甲斐性があれば、あたしだってこんな強硬手段を採ったりはしないのよ、うん! そういうワケで仕方なく、キョンを引っさげたあたしは道場破りみたいな面持ちと勢いで、その建物に乗り込んだのだった。通りには他に何組かカップルがいたけど、こういう時に人目を気にしたら負けよね。じゃあなんでお前の耳や頬はこんなにも火照ってるのかって、そんな事はいちいち訊くもんじゃないわ。 結局の所、そこはあたしがこの界隈に来て最初に看板を発見した白い建物で。外壁に提げられたその看板には、 【デイタイムサービス ご休憩3時間 3200円】 といった記述がなされていたのだった。 「ふうん…これがラブホって所なんだ…」 ちょっとした感慨を込めて、あたしは呟いた。てっきりピンク色の照明なんかがギラギラ光ったりしてるのかと思ってたら、何というか普通のホテルにカラオケボックスを合体させたような感じだ。部屋の広さに比べるとベッドが結構大きくって、あとティッシュやら何やらが脇に置いてあるのが、なんだか生々しい。 「…正確にはファッションホテルだかブティックホテルだかと呼ぶべきらしいぞ」 あたしの手で部屋に放り込まれたキョンが、カーペットに膝をついた格好でげほげほ咳き込みながらそんな事を言う。まったく、役にも立たない知識だけは豊富な奴ね。 などと思ってたら、キョンの奴は下から、じろりといった感じであたしを見上げた。 「やれやれ。俺もいいかげん、団長様の行動の突飛さにも慣れてきたかと思ってたんだが。とんだ思い過ごしだったみたいだぜ。 なんだ? まさか今日の不思議パトロールは女体の神秘を探検よ!とか言うんじゃないだろうな」 困惑ぎみのキョンの表情に、あたしは少しだけ、胸がスッとするのを覚えた。もっともっと、キョンの奴を困らせてやりた…あ、いや、違う違う。今日ばかりはあたしの都合は二の次なんだったわ。 決意も新たに、あたしは両の拳を腰に当てて前に身を屈め、キョンの顔を上から覗き込んでやった。どうにかして、こいつを励ましてあげなけりゃね! 「もし『そのまさかよ!』って言ったら、あんたはどうするわけ」 「なんだって?」 「本当の事を言うと、あたし、前々からあんたの恩着せがましい所にちょっとムカついてたのよね。あたしが何か命令するたびにさ、あんた、諦め顔で『あーもー好きなようにしてくれ』とか言うじゃない。あたし、アレがいっつも気に喰わなかったのよ。 えーと、だから、その…今日はその意趣返しっていうか」 少し言葉を詰まらせながら、あたしはそう喋っていた。う~む、論理展開に若干のムリがあるかも? いやいや、ここは強気で押し通すべきよ。 「つまり! 今は、この場所でだけはいつもの逆で…あたしの事をあんたの好きなようにさせてやろう、って話なのよ。分かった!?」 そう言い切るとあたしはベッドに歩み寄って、キョンに相対するように、ぽすんと腰を下ろした。ミニスカートから伸びる足を組んで、腕組みをして…キョンをまっすぐ見るのはさすがに気恥ずかしいので、フンと顔を横に向ける。 「あんたが、女の子の秘密を知りたいって言うんなら…別に構わないって、あたしはそう言ってるのよ…」 ともかく伝えるだけの事は伝えたので、あたしはそっぽを向いたまま、キョンの出方を待っていた。 ううう、なんともこうムズ痒い気分だわ! 普段のあたしは 「キョン! そこの荷物持ってついてらっしゃい!」 「キョン! ここはあんたのオゴリだからね!」 とか命令形で話してるものだから、こういう雰囲気はどうも落ち着かない。だからって、まさか 「キョン! あたしにエッチな事してスッキリしなさい!」 なんて言えるはずも無いし。 う~、でもあたしが憂鬱だった時にキョンが話しかけてきてくれたように、あたしもキョンの奴を刺激してやる事には成功したはずだわ。ちょっと方法が過激だったかもしんないけど。でもこういうのって、いつかは誰かと経験する事で――。じゃあ、その最初の相手がキョンでも別に悪くはないかなって、あたしは思ったの。少なくとも今の所は、他の誰かとする事なんて想像できないし。 ついひねくれた物言いになっちゃったけど、さっきのセリフだって、決してウソじゃない。いつもはこき使うばっかりで、「お疲れさま」とか面と向かって言う事もなかなか出来ないから…だから今日くらい、こういう形でキョンの労をねぎらってあげたって、バチは当たらないわよ、ね? とにかく、あたしは賽を投げつけてやったわ! あんたはどう出るのよ、キョン!? …と、振ってはみたものの。正直あたしの予想では、キョンが手を出してくる可能性は30%って所かな。「もっと自分を大事にしろ」だとか、当たり障りのない逃げ口上を使ってくるのが一番確率が高い。仕方ないわね。なにしろ、キョンだし。 まあ、あたしとしては別にどっちでも構わないのよ。キョンの奴に、あたしを抱こうとするだけの覚悟があるんなら、それは嬉しい誤算だし。必死になってどうにかあたしを説得しようとするんなら、それはいつも通りのあたしとあいつの関係に戻る、っていう事だもの。 どっちにせよ、あたしがあんたの事を気に掛けてる、その気持ちだけは伝わるはずだとあたしは思っていた。だから、悪いように事が転がったりするはずがないとあたしは信じていた。でも実際には――キョンの反応は、あたしが想像し得なかったものだったのだ。 「…なあ、ハルヒ。『好奇心、猫をも殺す』って言葉、知ってるか?」 「えっ?」 「今のお前のためにあるような、外国のことわざだよ」 むくり、と身を起こしたキョンは、そうしてゆっくりあたしの方へ歩み寄ってくる。部屋の照明は薄暗くて、その表情はハッキリとは見て取れなかったけど、ただなんとなくキョンの体の周りに、うすどんよりとした空気が漂っている、ような気がした。 「キョ、キョン?」 あたしの呼びかけにも応じず、キョンは黙ったままこちらに向かって片手を差し出してきた。あたしの左頬に、キョンの右の手の平が添えられる。 いつものあたしだったら、ここはドキドキしまくりな場面だろう。心臓の鼓動をなだめるのに必死なはずだ。でも今は何か、何かが違う。ちっとも心がときめかない。どうしちゃったの、キョン? 今のあんた、何か、こわいよ…? 「先に謝っとくぞ、ハルヒ。すまん」 少し右手を引きながら、キョンがそう呟く。それからすぐに、ぱしん、という乾いた音があたしの顔のすぐ傍で起こった。 頬をはたかれたのだ、という事を理解するのに、あたしの脳は、それから数十秒の時間を要した。 痛くはない。多分、トランプやら何やらの罰ゲームでしっぺやウメボシを喰らった方が痛い。ただ、キョンに叩かれた、という事実に頭の中が真っ白になってしまっているあたしに向かって、キョンはうめくような声を絞り出していた。 「でもな? 俺にだって許しがたい事ってのはあるんだよ。いいか、これだけは言っとくぞ。俺は間違っても、お前の身体が目当てでSOS団の活動に参加してたわけじゃない!」 あたしはただ、唖然としていた。あたしを睨み据えるキョンの瞳には、確かに憎しみと哀しみの色が入り混じっていた。 「ご褒美に身体を自由にさせてやるだと? 馬の目の前にニンジンでもぶら下げたつもりかよ。そうすれば男なんか、みんな大喜びだとか思ってたのかよ!? 俺も、そんな野郎の一人だと思ってたのかよ――。ふざけんな、人を馬鹿にするのも大概にしろ!!」 いつの間にか、キョンの感情のボルテージは急上昇していた。その怒声が、あたし達のかりそめの宿の中いっぱいに響き渡る。 その後、急速に静寂が訪れて…あたしの耳には備え付けの冷蔵庫の低いブーンという駆動音だけが、ただ虚ろに届いていた。 どうして――どうしてこんな事になってしまったのか。 キョンに頬をはたかれたショックに引きずられながら、それでもあたしは、ひたすらに考え続けていた。 躁鬱病だか何だか知らないが、たかだか心の病気くらいで女の子に手を上げるような、キョンは決してそんな人間では無い。何か、何か理由があるはずなのだ。こいつがここまで激昂するワケが。その証拠に、あたしを見下ろしているキョンの表情は、ひどく悲しく、悔しそうに見える。まるで自分の尊厳を、根こそぎ踏みにじられたような…。 そこまで考えた時、あたしはさっきのキョンのセリフをもう一度思い返してみた。キョンの立場になって、もう一度その意味を考え直して――そして、やっと自分のあやまちに気が付いた。 ああ。ああ、そうか。そうだったんだ。キョンの奴は…口ではなんだかんだ言いながら、こいつはこいつなりに、SOS団の活動に誇りを抱いていたんだ…。 そうよ、あたし自身が何度もキョンに言ってたんじゃない。この不思議探索はデートじゃないのよ、真面目にやんなさい!って。 キョンの奴が大した成果を上げた事はなかったけど、それでもちゃんとSOS団の一員としての自覚は持ってたんだ。こいつはその誇りを、胸に秘めていたんだ。 なのに団長たるこのあたし自らが、午後のパトロール任務を放り出して相方をラブホに連れ込むようなマネをしたら、それは「ひどい冒涜」だと受け取られても、仕方がなかったかもしれない。ごめんね、キョン。あたしにも反省すべき点はあったわ。でも、でもね? すっくとベッドから立ち上がったあたしは、真正面から、毅然とキョンを睨み返してやった。 「『ふざけるな』ですって? 『馬鹿にするな』ですって――? それはこっちのセリフよ、キョン!!」 啖呵と共に、左手でキョンの右腕を掴み、右手をキョンの左脇の下に差し込む。そのままくるりと回転して、あいつの体を腰の上に担いだあたしは、渾身の力でキョンを前方に投げ飛ばしてやったのだった。 女子柔道部に仮入部した際に憶えた技だ。確か『大腰』だっけ? まあ技の名前なんてどうでもいいけど。とにかく、ごろんごろんと面白いくらいの勢いで投げられ、転がっていったキョンは、部屋の出入り口扉の横の壁にぶつかって、ようやく止まった。 一瞬の事で何が起きたのかまだ分かっていないのか、尻餅をついた格好で茫然自失といった顔をしてる。ふふん、いい表情ね。 「人を馬鹿にしてるのは、キョン、あんたの方でしょうが!」 「…なんだって?」 「あたしは、涼宮ハルヒはね! 明日後悔しないように、今を生きてるの! こうしたら得するだろう、こうしたら損するだろうとかじゃなくて、いま自分がどうしたいかを第一に、ひたすら前進してるの! その決断の早さに凡人のあんたがついてこられなくて、戸惑わせちゃった事は一応謝っとくわ。だけど、だけどね!」 心の中の憤りを包み隠さず、あたしはキョンの奴を大喝してやった。 「『好奇心、猫をも殺す』ですって――? そっちこそふざけないでよ! あたしが本当に、ただの好奇心であんたをホテルにまで連れ込んだと思ってんの!? 見損なうな、このバカっ!!」 さっき、キョンは『俺にも許しがたい事はある』と言った。なら、あたしの許しがたい事はまさにこれだわ。キョンの奴が、あたしの決意と覚悟をまるでないがしろにしてるって事よ! 「確かにね!? あんたとここに入って、そーゆー事しようってのは、ついさっき思いついたわよ! 後先考えてないって言われたら、否定できない部分はあるわよ! でもね! あたしだってちゃんと考えたのよ! あんたとそーゆー関係になっちゃってもいいのかって! 初めての相手が本当にあんたでいいのかって…。百万回も! それ以上も! 頭の回路がぐるぐるぐるぐる回って、しまいにはバターになるんじゃないかってくらい真剣に考え詰めたのよ! その上で、あたしはあんたと今、ここに居るのに…それなのにッ!」 さっきのお返しとばかりに、あたしは出来うる限りの鬼の形相で、キョンの奴を見下ろしてやった。もうこうなったら徹底的に糾弾よ糾弾、アストロ糾弾よ! 「あたしだって、こんな事するのはすごく恥ずかしかったのよ! でも、ちょっとしたショック療法っていうか――つまんない悩み事なんて忘れちゃうくらいの刺激を与えたら、あんたが少しは元気を取り戻すんじゃないかと思って…。他にあんたを元気づけてあげられる手段を思いつけなくって、それに、それにそもそもは、あんたがあんな事を…言ったから、だから――」 あれ? おかしいな? キョンの奴を、これでもかってくらい締め上げてやるはずだったのに。気が付くとあたしの言葉は途切れ途切れに、言ってる内容もなんだか支離滅裂になっていた。 そして、頬の上をはらはらと伝わっていく冷たい物…。これは…悔し涙? ちょっと、ダメよ! 何やってんのよ、あたし!? ここは団長としての威厳を見せつけて、キョンの誤解をねじ伏せてやるべき場面でしょ! 何を普通の女の子みたいに泣き崩れそうになってんの!? しゃんとしなさい、しゃんと! ああ、でも無理だ。元々あたしは、感情をセーブするというのが苦手なのだ。ダムが決壊したみたいに、溢れはじめた想いはもう、止められなかった。 「だからあたしは、思い切って一歩踏み出したのに! それをあんたは…男なら誰でもみたいな…言い方をして…。 あんたはただの下っ端だけど…栄えあるSOS団の、団員第1号なのに…。あたしの最初の仲間だったのに…そのあんたに、そんな…風に、思わ…てた、なんて…」 心のどこかで、あたしは、自分が勇気を出したらキョンはきっと応えてくれると信じていた。そう期待していたのだ。でも、その期待はあっけなく裏切られてしまったから、だから――。 「もう…知らない。知らないわよ、あんたの事なんて! このバカ! バカキョン! あんたなんか、一生ぐじぐじ腐ってればいいのよ!」 自分があんまりみじめで、この場にはどうしても居たたまれなくて。あたしは小走りに駆け出した。キョンの横の扉を通り抜けて、表へ飛び出した。 ううん、違う――そうしようとしたのだ、だけど。 ドアノブを回そうとしたあたしの手に、あいつの手が重なっていた。消え入りそうな微かな声で、でも確かに、あいつはこう言った。 「悪い…。すまなかった、ハルヒ…」 なによ。何をいまさら謝ってるのよ。遅いのよ、このバカ! 衝動のまま、あたしはよっぽどそう怒鳴りつけようとした。振り払おうと思えば、あいつの手を振り払う事だって出来た。でも――。 「確かに、俺はバカだった…バカげた勘違いをして、そのせいでお前をひどく傷つけちまって…すまん、本当にすまん…」 キョンの奴、いつになく真剣に謝るんだもの…。自分で先にバカとか言われちゃったら、こっちだって怒りづらいじゃないのよ。 「本当はな? 本当は俺、お前の心遣いが嬉しかったんだ。 昨日の友達の葬式からずっと、俺はなんだかモヤモヤした不安を抱えながら過ごしてた。今日の不思議探索も、家でじっとしてたら今よりもっと気が滅入っちまいそうだから、ただそれだけの理由で参加しに来たんだ」 うつむいたまま、消え入りそうな、か細い声で呟く。あたしには今のキョンが、なぜだかやけに小さく見えた。 「気持ちが沈んでるのは分かってても、自分ではどうする事も出来なくて。お前の言った通り、俺は心の病気とやらに罹ってたんだろうな。 だからハルヒ、お前が俺の事を気に掛けてくれたのが嬉しかった。いきなりホテルに連れ込まれた時はそりゃもちろん驚いたけど、本心じゃすごく嬉しかったんだよ。 けどな――。もしも、もしもだ。 ここにいるのが俺じゃなかったら? そう思ったら、その嬉しさが逆に、心をキリキリ締めつけ始めたんだよ」 そうして再び口を開いたキョンの独白には、明らかに自嘲の色が混ざっていた。 「もしも今日のクジ引きでコンビを組んでたのが、俺じゃなくてハルヒと古泉だったら? もしも落ち込んでたのが俺じゃなくて、古泉の野郎だったら? ハルヒの奴は同じような手段で慰めたりしたのか?ってな」 「ちょ…なに言ってんのよ、キョン! そんな事あるわけが」 「俺だって分かってたさ、そんなのは邪推だって! だけど、それでも…」 一瞬、語気を鋭くしたかと思うと、キョンの奴はあたしの手に重ねていた手を、自ら離してしまった。その手で自分の顔を覆って、うめくように呟いた。 「それでも一度心にまとわりついた疑念を、俺は振り払う事が出来なかったんだ。 お前に優しくされるたびに、俺は逆に、針で突つかれたような気分になって…お前の善意を、わざとひねくれて受け止めて。正直、ビックリしたよ。俺ってこんなに卑屈な人間だったんだな、ってさ」 乾いた笑いを洩らして、それからキョンは、疲れた顔であたしを見上げた。 「すまなかったな、ハルヒ。お前に投げられて、逆になんだかスッとしたよ。自分がどれだけバカだったか、ようやく実感できた。 それだけ伝えたかったんだ。もうどこへでも行っていいぜ? 俺なら大丈…」 「どこが大丈夫なのよ、このバカっ!」 くだらないセリフを聞き終えるまでもなく、あたしはキョンの脳天にチョップを振り下ろしてやったわ。そしてあいつがひるんだ隙に耳たぶを引っ掴み、今度こそ大声で怒鳴りつけてやったの。 「自己陶酔はそれで終わり? だったら、今度はこっちの番ね!」 宣告するなり、有無を言わさず。 あたしは引っ張り上げたキョンの頭を、空色のブラウスの胸の中に、ギュッと抱きしめてやったのだった。 「まったく! あんたはいつも斜に構えてばっかだから、感情表現ってのが下手くそなのよ。だから心に余計な重荷を抱え込んじゃうのよね」 「お、おい。ハルヒ、これは…?」 「なによ。どうせ言葉で何を言ったって、あんたはひねくれた受け取り方をしちゃうんでしょ? だから態度で示してあげてんの。 言ったはずよ、あたしがあんたを治療してやるんだって。言ったからには、あたしは断固としてあんたを治すの! どんな手段を使ってもね!」 ぴしゃりとキョンの反論を押さえ込み、それからあたしは、最上級の微笑みであいつに語りかけた。 「だから、キョン。病気の時くらい、あたしを頼りなさいよ。 これもさっき言ったはずでしょ、今この時、この場所でだけは、あたしの事をあんたの好きなようにさせてあげるって。 分かった? 分かったなら今は、あたしの胸に不安でも卑屈さでも、何でも委ねちゃいなさい。全部受け止めてあげるから」 「ハルヒ、お前…怒ってないのか?」 「団長様を舐めんじゃないわよ。心が苦しい時とか、つい思ってもない事を口走っちゃったり、そういう気持ちくらいお見通しなんだからね!」 あたしの、自分で言うのも何だけど天使のような慈愛の言葉に、キョンの奴はしばらく戸惑いの表情を浮かべていた。けれども、やがて両の目蓋を閉じ、あたしの胸に深く顔をうずめてくる。 「ん、素直でよろしい。 それじゃ、これは団長としての命令ね。さっさと普段のキョンに戻りなさい。下っ端のあんたがそんなんじゃ、みくるちゃんや有希や古泉くんに迷惑が掛かるんだから」 「………ああ」 そうして小刻みに震えるあいつの背中を撫ぜ、胸の中から響いてくる小さな嗚咽を聞きながら、あたしは心の内で、いつものあいつの口癖を真似ていたのだった。 やれやれ、本当に世話の焼ける団員なんだから――ってね。 それにしても、まあ。 いつもはあれだけ減らず口ばかり叩いてるくせに、一度タガが外れたらこんなものなのかしら男の子って。図体ばかり大きくっても、こいつも中身はまだまだ子供ね。 「ハルヒ…」 「うん? なあに、キョン」 「お前の身体って、なんだかいい匂いが(バシッ!)」 訂正! 訂正訂正! こいつの中身はエロエロ大王だわ! 「どさくさに紛れてなに言いだすのよあんたはッ!?」 「いってーな! なんだよ、褒め言葉だろ?」 「ほ、褒め方がヘンタイっぽいのよっ! いきなりそんなコト言われる方の身にもなってみなさいよ、このバカっ!」 予想してなかった所に不意打ちを喰らって、あたしは思わずキョンの奴に手を上げてしまっていた。もうほとんど条件反射。パブロフの犬も爆笑ね、これは。 そんなに強く引っぱたいたつもりはなかったんだけど、中腰の姿勢であたしの胸にすがっていたキョンは、よろけた拍子に後頭部をしたたか壁にぶつけてしまった様子だった。う~っ、そんな恨みがましい目でこっち見なくたっていいじゃない。今のは事故よ事故! 事故なんだから! そりゃ『今だけはあたしのこと好きなようにしなさい』って言い出したのはこっちの方だけど、でもあたしだって初めてでやっぱり緊張してるんだし。あんただって、少しはムードを盛り上げる努力とかしなさいよ! ほら、その、キ、キ、キスとか、さ!っていうかキョン、あんた、まだあたしに――。 などと、あたしが形容しがたい感情の変転に心を振り回されていると。キョンの奴はその表情を、唐突に苦笑いに変えた。 「やれやれ、今のも本気で褒めたつもりだったんだが。どうも人生ってのはままならないもんだ」 「なによ、キョンったら大げさね。こんな事くらいで人生語っちゃって」 「いや、まあ何というかだな…」 言いづらそうに語尾を濁して、キョンは頬を掻きながら視線を逸らした。 「これ、本人からは『内緒ですよ?』って言われてたんだけどな。実は俺、午前の探索の時に忠告を受けてたんだよ、朝比奈さんに」 「へっ? みくるちゃんから、忠告?」 ええと、それからこいつが語った所によると。 午前の間に、みくるちゃんからキョンにアドバイスがあったそうなのよ。いわく、 「あのね、キョンくんの事も心配なんだけど、わたしとしては涼宮さんの事も心配なの。キョンくんがいつもの調子じゃない事を、彼女、すごく気にしてるように見えたから。 だからキョンくん、本当に元気出してくださいね? それと、もしかしたら涼宮さん、ちょっと強引な方法でキョンくんを励まそうとしたりするかもしれないけど…広い心で受け止めてあげてね? お願い」 という事らしい。 へえ、あのみくるちゃんがそんなお姉さん的発言をねぇ。まがりなりにも先輩、って事なのかしら。外見からは、とても年上とは思えないんだけど。 うーむ、でもあたしがキョンの事を気にしてる間に、みくるちゃんはあたしとキョンの両方を心配するだけの余裕があったわけだから、ここは素直に敬服しておくべきかしら。うん、そうね。次のコスは女教師物なんかが良いかも………って、えっ? ええっ!? という事は? ロボットみたいにぎくしゃくした動きでキョンの方へ首を向けたあたしは、おそるおそるあいつに訊ねかけてみた。 「じゃ、じゃあキョン、あんたひょっとして…気付いてたの?」 「やれやれ、やっぱそうだったのか。長門が午後のクジ引きの爪楊枝を差し出してきた時点で、妙な感じはしてたんだけどな」 少し困ったような顔で、キョンの奴は大きく肩をすくめてみせた。 つまりまあ、そういう事だ。 午前の探索の間に、あたし、有希、古泉くんの3人は、キョンを元気付けるための作戦を立てた。その際、古泉くんは 『彼の場合、変なお膳立てをしてしまうと、かえって反発しかねません。ここはあくまで偶然を装うとしましょう』 というアドバイスをくれて、あたしと有希もそれに同意。午後の班分けの時に有希に協力して貰って、作戦は決行されたわけよ。 ところが一方、同じく午前の探索の間に、みくるちゃんはキョンに 『もしかしたら涼宮さん、ちょっと強引な方法でキョンくんを励まそうとしたりするかもしれないけど――』 とアドバイスしていたわけで。キョンの奴には、あたし達の“お膳立て”はバレバレだったらしい。 はー、道理でキョンの奴、あたしの言葉をひねくれて捉えてたわけだわ。 あたしだって時々、親の気遣いなんかを「余計なお世話っ!」とはねのけてしまう事があるもの。心を病んでいたキョンが、みんなの心配を逆に、自分が弄ばれてるように錯覚して受け止めてしまったとしても無理はないわね。 けど、それにしたってこれは…ねえ? さっきまでキョンの治療をしてあげるとか言っていたあたしだけど、今はむしろ、自分の方が虚無感とやらに襲われてる気分よ。 「なんだかなあ…。あたし達SOS団全員、お互いに良かれと思って、その実は足の引っ張り合いをしてたわけか…」 「俺も結局、せっかくの朝比奈さんの忠告を生かせなかったし。結果的にはそういう事になるかもな」 だからって、もちろんあたしは、みくるちゃんを責めたりする気にはならないわよ。みくるちゃんはみくるちゃんで、あたし達のためにいろいろと気を使ってくれたわけだしね。 ただ、何と言うか…廊下で向こうからきた人をよけてあげようとしたら、あっちも同じ方向に動いてきたみたいな? そんな苛立ちと虚しさを、さすがのあたしもひしひしと感じざるを得なかったわね。さっきまであれやこれやと、さんざん気を揉んできただけに。 「なんか、急に疲れがどっとわいてきちゃったわ。もしかしてあたし達って、ずっとこんな風にうまく行かないのかしら」 「おいおい、さすがにそれは…ん、いや待てよ? だとしたら、あー…」 あたしの嘆息に苦笑しかけて、キョンは急に真剣な顔になると、なにやら考え込み始めた。ちょっと、いったい何なのよ? 「なあハルヒ、お前は普通じゃない体験をしたいんだよな?」 「はぁ? 何よいまさら」 「そいつは一言で言うと、映画や小説の主人公みたいになりたいって事か?」 「ええ、そうね! あたしにはやっぱり、主役級の大活躍こそがふさわしいもの!」 鏡を見るまでもなく、この時のあたしは宝石みたいに瞳をキラキラ輝かせてたはずよ。そんなあたしに向かって、キョンの奴はどこか呆れたような表情を見せた。ちょっと、自分で振っといてその態度は何よ!? 「それじゃ仕方がないな。お前の行く手には、常に何らかの障害が立ちはだかるってこった」 「えっ? どういう事よ、それ!?」 「だってそうだろ。俺が映画で見た冒険家は、お宝にたどり着くまでにゴロゴロ転がる大岩に嫌ってほど追い回されてたし、名探偵は後ろから角材で殴られたり、覚えのない冤罪の汚名を被せられたりしてたもんだ。 逆の視点から見れば、映画やら小説やらの主人公ってのは、そういうトラブルをどうにかして乗り越えていくからこそ魅力的なんじゃないのか?」 愉快じゃないけどキョンの指摘は確かで、あたしは頷かざるを得なかった。 「それはまあ…そうかもしんないけど」 「つまりだ、お前が主役級の大活躍って奴を追い求めてる以上、必然的に何かに妨害されて、どうにも思うように事が運ばないって状況が訪れるわけだな」 そのセリフから一拍置いて、すっと目を細めたキョンは、なにやら挑戦的にあたしに問いかけてきたのだった。 「さて、どうするんだ団長さんよ? これからもいろいろと邪魔が入るとして、それでもまだスーパーヒロインを目指すのか?」 ああ、この顔だ。少し皮肉っぽい口元。諦観の混じった眼差し。小首を傾げて、どこか挑発するようにあたしに訊ねかけてくる。 あたしに向かって、こんな顔をする奴はそうはいない。あたしの大っ嫌いで、そして大好きな――いつもの、キョンの小憎たらしい表情だ。 「ずいぶん大層なご口上ね、キョン。あたしを試してるつもりかしら?」 キョンの奴が復調したからには、何も遠慮する事はない。あたしは腕組みをして、キョンの頭の真横の壁にドン!と片足を踏みつけると、大上段から丁寧に答えてさしあげたわ。 「妨害? 邪魔? 望む所よ、来るなら来たいだけ来ればいいわっ! この涼宮ハルヒ様の前を塞ぐような連中はね、たとえ緑色の火星人だろうが青っちろい海底人だろうが、みんなまとめてボッコボコにして…あげ…」 そう、あたしは大見得を切るつもりだった。それにやれやれとキョンが呟くのが、いつものあたし達の小気味良いパターンのはずだった。のに。 「…ハルヒ?」 けれどもその時、キョンの顔を見た瞬間。 あたしはなぜかセリフを途中でノドの奥に詰まらせて、ホテルの一室に、馬鹿みたいに呆然と立ちつくしてしまったのだった。 どうしたんだろう。舌がなんだか縮こまっちゃって、うまく話せない。 「ね、ねえキョン。その、つまんない疑問なんだけど、さ」 「うん?」 こちらを見るキョンの様子がおかしい。明らかに心配そうだ。そんなに今のあたしはひどい表情をしているのか。 「こないだ、なんとなく深夜映画を見てたのよ。それがまた陳腐でチープなB級とC級の相の子っぽい、つまんない代物だったんだけど」 「ふむ、そりゃまた中途半端につまらなそーな映画だな。しかしハルヒ、あまり夜更かしが過ぎるとお肌に悪いぞ」 「うっさい、話を混ぜっ返すなっ! …でね、その映画ってのが、途中で主人公をかばってヒロインが死んじゃうのよ。でもって墓前に復讐を誓った主人公が敵の本陣に乗り込んで、クライマックスになるわけなんだけど」 べたりと汗のにじんだ手の平を握りこんで、あたしはキョンに訊ねかけた。 「もしも。もしもよキョン、あんたが言った通り映画の主人公がトラブルを乗り越えて行くべき存在なら…ヒロインが死んじゃったのって、それって主人公のせいなのかしら…?」 あたしがその質問をした途端、キョンは「あ」と小さく声を上げた。苦虫を噛み潰したような表情になって、それから、ゆっくり口を開いた。 「おい、ハルヒ。分かってるとは思うが、さっき俺が言ったのは『物語を客観的に見ればそういう考え方も出来る』って程度の話だぞ」 うん、そうよね。それは分かってる。 「脚本家やらプロデューサーやらの都合じゃヒロインが死ぬ必然性はあったかもしれないが、それは当然、主人公の意思とは無関係だ」 それも分かってる。けど。 「だいたい、自分が活躍するためにヒロインが死ぬ事を望むヒーローなんか居るかよ。もし居たとして、そいつはヒーローなんかじゃない。 だからその、何というか。要するに、俺はお前を責めるつもりであんな発言をしたわけじゃないってこった。単純にお前にトラブルを乗り越えてく覚悟があるかどうか確かめたかったっつーか、なんとなく意地悪な質問をしてみたかっただけというか。 大体ここまで人を巻き込んどいて、いまさら遠慮とかされても逆にだな」 「分かってるわよそんな事ッ! だけど…」 そう、分かってる。分かってるのよ。キョンの言い分は全て理にかなってる。こんなに声を荒げてるあたしの方が、きっとおかしいんだ。 でも。それでも! 「でもやっぱり、主人公が英雄的活躍を求めた結果として、ヒロインが死んじゃった事には変わりないじゃない!? あたしは、そんなのは嫌…。あたしのせいでキョンが居なくなるなんて、絶対に我慢ならない事なのよ!」 ああ、言ってしまった。直後に、あたしはそう思った。 それは言いたくなかったこと。認めたくなかったこと。でも言わずにはいられなかったこと。 「――北高に入って、あたしの日常はずいぶん変わったわ。毎日がとても楽しくなった。中学の頃なんかとは段違いに。 あたしはそれを、自分が頑張ったおかげだと思ってた。SOS団を作って、不思議を追い求めて。前に向かってひたすら走ってるから、だから毎日楽しいんだと思ってた。 昨日まで、ついさっきまで、そう思ってたのよ! でも、違った。本当はそうじゃなかった…」 「何が違うんだ? お前が日常を変えようと努力してたって事なら、俺が証人台に立ってやってもいいぞ? その努力の方向性が正しかったかどうかは別問題として」 この湿った雰囲気を変えようとでもしてるのだろうか、軽口っぽくそう言うキョンを、あたしは鋭く睨みつけた。 「だから、それよ! 気付いちゃったのよ、あたしは、その事に!」 「意味が分からん。いったい何に気付いたっていうんだ?」 「あんたが、あたしの背中を見ていてくれるから! だからあたしは走り続けていられるんだって事によ!」 気が付くと、あたしは深くうつむいていた。今の表情を、キョンの奴には見られたくなかったのかもしれない。 「中学の頃だって、あたしは走ってたのよ。日常を変え得る不思議を捜し求めてね。でもあたしはずっと一人で…息切れとか起こしたって、それに気付いてくれる奴は誰も居なかった…」 「…………」 「あの頃と今と、何が違うのか。 今のあたしが前だけ向いて、心地よく走り続けられるのは、それはあたしの後ろで、あたしの背中を見続けてくれる奴が居て…。もしもあたしが転んだとしても、すぐにそいつが駆け寄ってきてくれるっていう安心感の後ろ盾があるからだ――って…気付いちゃったのよ…」 喋っている間に、いつの間にか立ち上がったキョンが、すぐ前に立っていた。あたしはうつむいたままだからその表情は分からないけど、腕の動きから察するに多分、さっきぶつけた後頭部をさすっているんだろう。 「ありがたいお言葉なんだが、お前にそう殊勝な事を言われると、驚きを通り越して寒気がするんだよなあ。 ともかくハルヒよ、別にそれは俺だけの話じゃないだろ。朝比奈さんや長門や古泉、その他もろもろの人がお前を支えてくれてる。俺なんかパシリ役くらいしか務まってないぞ」 「そうよ! あんたはみくるちゃんみたいな萌えキャラでもないし、有希ほど頼りになんないし、古泉くんほどスマートでもないわ! せいぜい部室の隅に居ても構わないってくらいの存在よ!」 「やれやれ、俺はお部屋の消臭剤か」 なんで、あたしはこんなにイラついてるんだろう。どうしていちいちキョンの言葉に反応してしまうんだろう。 あたしの不愉快さは、それはもしかして…不安の裏返しなの? 「そう、あんたは特に取り柄があるわけでもない、ただ単に手近な所に居ただけの奴だったのに! そのはずなのに! でもあの春の日に、あたしの髪型の変化に気が付いたのはあんたで…その後もあたしの事を一番気に掛けてくれるのはあんたで…。 いつの間にかあたしは、あんたに見られる事を意識するようになってた…。あたしがこうしたらあんたはどんな反応するだろうって、それが一番の楽しみになってた。 あんたが変えちゃったのよ、あたしを! もうあの頃のあたしには戻れないのよ! それなのに、あんたがあんな事を言うから…」 ああ、失敗。失敗だ。 うつむいてしまったのは大失敗だった。確かに表情を見られはしないけど、にじみ出てくる涙をこらえられないんじゃ、意味がない。 「あんたが…人間なんて明日どうなってるか分からないとか言うから…。だからあたしは、こんなに不安になってるんじゃない!」 あんまり悔しくって、あたしは涙に濡れた顔を上げ、再びキョンの奴を睨み据えていた。 つい先程聞いた有希のセリフが、また胸の奥でこだまする。 『彼の言っていたのはある面での、真理』 『価値観は主に相対性によって生ずる。最初から何も無かった状態に比して、あるはずだったものをなくしてしまった時の喪失感は、絶大』 今なら、その意味が分かる。 あたしにとってあるはずのもの、そこに居てくれなければ困るもの。それは、キョンだったんだ――。 「もし…もしもあんたを失っちゃったら、きっとあたしは今のあたしのままじゃいられない…。何度も何度も後ろを振り返って、おちおち前にも進めなくなる…。 そんなの嫌! そんなのはあたしじゃない! だから、あたしは!」 こんな事を言ったら、キョンはきっとあたしの事を軽蔑するだろう。そう思いながらも、でも一度ほとばしった罪の告白は、途中で止められるものではなかった。 「あんたをここへ、ラブホへ誘ったのは、なんとか励まして元気付けたかったからっていうのは本当。 でもあたしにはあたしなりの思惑があって…。あんたが目の前に居て、あんたに触れる事が出来る内に、あんたとしておきたかった…。 あんたがあたしと一緒に居たって証拠を、心と身体に刻み込んでおきたかったのよ! 悪い!?」 はあ。 言っちゃったなあ…あたしのみっともない本音を。 キョンの奴も、さすがに愛想が尽きただろう。いつも偉そうぶってるあたしがこんな、ただの利己主義で動いてるような人間だと知ったら。 キョンの反応が恐くて、あたしはギュッと固く目を瞑って、肩を震わせる。そんなあたしの耳に、キョンの呆れたような声が届いた。 「やれやれ。男冥利に尽きるお言葉ではあるんだが、願わくばもう少し可愛げのある言い方をしてくれないもんかね」 「………は?」 「いや、訂正しとこう。可愛げのあるハルヒってのは、やっぱりどうも薄気味悪い。少し横暴なくらいがお似合いだな」 「な、なんですってぇ!?」 あたしの本気を茶化すような、あまりといえばあまりの雑言に、あたしは思わず目を剥いて、キョンの胸倉を掴み上げてしまう。 すると、キョンの奴は悪びれもせずにあたしの目を見つめ返し、子供をあやすようにポンポンとあたしの頭を叩きながら、こうささやいた。 「なあ、ハルヒ。ひとつ訊くぞ?」 「…何よ」 「お前は、俺に消えていなくなってほしいのか?」 「なっ、このバカ! 今までなに聞いてたのよ、その逆でしょ!? あたしは、あんたと…」 「だったら、つまんないこと心配すんな」 え、と顔を上げたあたしに、キョンは驚くほどキッパリと言い切ったの。 「お前が望んでる限り、俺は、ずっとお前の傍にいるはずだから」 ――まったく。 まったくもう、なんでこいつは。 普段は優柔不断の唐変木ののらくら野郎のくせに、こういう時だけは断言できたりするのだろうか。 不覚にも、ぐっと来てしまったじゃないか。 不覚、不覚! 涼宮ハルヒ一生の不覚! 気付けばあたしはキョンの胸にすがりついて、ボロボロに泣き崩れていた。さっき流した悔し涙や、不安と寂しさで流した涙とは全然違う、それは頬がヤケドしそうなくらい、熱い、熱い涙だった。 あーあ、ヤんなっちゃうな。 キョンのシャツに濡れた頬をうずめながら、あたしは心の中で溜め息を吐いた。一度タガがはずれちゃったら、子供みたいに脆いのはあたしの方じゃない。そんなあたしの背中を、キョンは優しく撫ぜてくれている。 今日は、あたしがキョンの奴を励ましてやるはずだったのに。いつの間にこうなっちゃったんだろう。なぜだかこいつ絡みだと、物事がいちいちうまく運ばない。 どうしてキョンが相手だと、こんなにも調子が狂っちゃうのかな。理由を知っていたら、誰か教えてほしい。 うん、でもそんなに悪い気はしない。っていうか、むしろあたしはずっとこうしたかったのかな…? 弱みも何も全部さらけ出して、キョンにぶつけてみたかったのかも。 ひょろっとしてる印象だったけど、キョンの胸、意外とガッシリしてる。やっぱり男の子なんだなぁ。クーラーが強めに効いた部屋の中、こいつの体温が心地いい。もう、いっそこのまま時間が止まってくれれば…いいの…に…? ――えーと、ちょっとゴメン。あたしのおへそ辺りに当たってる、この硬いモノは、一体なに? あ、いやいい。説明いらない! 遠慮する! ここがどこで何をする場所かって考えたら、自ずと分かるし! そうよ、何をいまさら。落ち着け。落ち着け、あたし。はい、深呼吸。ひっひっふー、ひっひっふー。 はぁ。しかしこいつも、ついさっきまで 『俺は間違っても、お前の身体が目当てでSOS団の活動に参加してたわけじゃない!』 とか何とか言ってたくせに、ココはしっかりこんなにしてんのね。まったく、これだから男って奴は! まあ、でも大目に見てやるとしますか。キョンの奴、あたしでこんなになってるんだ――って思ったら、正直ちょっと嬉しいし。 いいわ、ここはあたしの方からきっかけを作ってあげる。このままじゃ、まるであたしが一方的に泣かされてるみたいで、なんだかシャクにさわるしね! トン、と軽く突き放すように、あいつの胸に両手をつく。2、3歩下がって、数秒うつむき、それからあいつに向かって全力の明るい笑顔を見せつけてやる。 「キョン、あたしちょっと顔洗ってくる!」 「え?」 「こんな顔、みくるちゃん達に見せられたもんじゃないでしょ! いい? すぐ済むからちゃんと待ってんのよっ!?」 キョンの眼前に人差し指を突き出し、なるべくいつもの口調っぽくそう命令する。キョンの奴はまだ心配そうな、そしてなんだか名残惜しそうな表情をしていた。ふふ、変な顔! 精一杯の笑顔を浮かべたまま、あたしは虚勢を張ってるのがバレない内にバスルームへと駆け込んで、後ろ手に扉を閉めた。 ふー。よし。 ひとまず作戦の第一段階は成功ね。 鏡を見てみる。うわ、眼が真っ赤だ。目蓋もちょっと腫れぼったい。あれだけぐずってたんだから、それも当然か。 蛇口をひねり、両手ですくった冷たい水で、叩きつけるように何度も顔を洗う。備え付けのタオルで顔を拭いて、もう一度、鏡を見てみる。うん、だいぶマシになったかも。 そうしてあたしは、鏡の中のあたしと視線を合わせた。 「本当にいいかな、あたし?」 (いいんじゃないの、あたし) すぐに鏡の向こうから答えが返ってくる。そうね、さっきの涼宮ハルヒ百人委員会は、賛成87票、反対5票、棄権8票だった。今は違う。今は賛成100票だって確信できるわ。 あいつが、あんなにもキッパリと言い切ってくれたから。だからもう、ためらわない。後戻りはしない。 ん、とひとつ頷いたあたしは、ブラウスの胸のボタンを上からひとつずつ外し、インナーのキャミソールごと一息に脱いで、それを衣装カゴに、ぽいと放り込んだのだった。 続いて背中に手を回し、ブラのホックに指を掛ける。瞬間、なんとなく孤島での嵐の中の出来事を思い返した。 あの時も、キョンはあたしの事を助けてくれたっけ。あいつは自分の事を「せいぜいパシリ役」だとか言うけど、ああいう時に自分がどれだけ他人のために一生懸命になれるのか、当の本人は気付いてないのかしらね。 くすっと、自然に笑みがこぼれる。気恥ずかしさよりもなんだか愉快な気分で、あたしはブラの肩紐から両腕を引き抜いた。 スカートのホックも外し、すべり落ちたそれを爪先に引っ掛けて、これも衣装カゴの中へ。ショーツは…履いたままでいいか。ほら、男の子ってこういうの自分の手で脱がすのも萌え~!だとか言うじゃない? …ってのは建前で。本音を言うとさすがに全裸っていうのはちょっと抵抗があるの。まだ初心者なんだもの、仕方ないでしょ!? とにかく、今はこの薄布1枚があたしの心の防波堤だ。うむ。 とまあ、ここまでは良いとして。次にあたしは、初心者ならではの難問にぶち当たってしまったのよね。 「靴下って…脱いどくべきなのかしら…?」 しまった、あたしとした事が。これはリサーチ不足だったわ。う~、だってそういうフェチとか? 正直あたしには形式的な面しか分からないんだもの。 でも大丈夫、こういう時こそ萌えキャラのみくるちゃんでシミュレートよ! えーと、パンツ一丁および靴下オンリーな姿でキョドってるみくるちゃん…。う~む? …なんだか狙い過ぎであざとい気がするわ。キョンはもう少し自然体な方がストライクよね、きっと。 結局、あたしは靴下も衣装カゴに放り込んで、裸身の上にバスタオルを巻いた。本当はシャワーを浴びたい所だったけど、軟弱者日本代表みたいなキョンの場合、あたしが出て行くまでの間に緊張感に耐え切れなくなって逃げ出しかねない。だからここは譲渡してあげるわ。あたしの気遣いに感謝なさい、キョン! 出て行く前にもう一度鏡を見て、髪型やら何やらをチェック。それから生唾をひとつ飲み込んで、あたしはバスルームの扉を押し開けた。 いっそのこと冗談っぽく、 「はーい出前でーっす! 涼宮ハルヒ一丁、お待ちーっ!」 とでも言ってやろうかと思ったけど、さすがにそれはキョンも引くわね。 っていうか、やろうったって出来ない。いつか部室であたしが着替えようとした時みたいに、キョンにスルーされたらどうしようとか思うと、それだけで足元がおぼつかなくなる。ううん、大丈夫。あの時とは状況が違うわ。 はたして。キョンの奴はあたしに背を向けるように、ベッドから前に身を乗り出していた。どうやらテレビ台の中のゲーム機を物色していたらしい。扉の音に気付いて、こちらへ振り返ったキョンは一瞬ぎょっとした表情を見せ、それから困ったように視線をあらぬ方向へそらした。あー、でもこっちの方をチラ見はしてるみたい。 良かった。良くはないけどでも良かった。顔を洗うだけにしては時間が掛かり過ぎなのである程度は察していたのか、キョンの奴、思ったよりはあたしの格好に動揺してないみたいね。 ベッドの端に腰掛け直したキョンは、あ~、とか、ん~、とか唸りながらしばらく言葉を選んでいたけれど、結局うまい表現がみつからなかったのか、やがて所在無げに立ち尽くしているあたしに向かって、無言のまま自分のすぐ左隣をポンポンと叩いてみせてくれる。 内心でホッとしながら、でもその思いはおくびにも出さずに、あたしはバスタオルの胸元を押さえつつ小走りでキョンの元へ駆け寄って、誘いのまま横に腰を下ろした。 むう~。隣に座ったはいいけど、キョンと視線を合わせらんない。あたしは馬鹿みたいに、前方のカーペットの模様ばかりを眺め続けてる。キョンはキョンで、こっちをまともに見ようとしないし。まるでクイズ番組に出場してはみたものの、緊張しすぎで何も答えらんない一般視聴者みたいだわ。 きっかけ、何かきっかけはないものかしら。いっそ空から隕石でも落ちてきてくれれば、キャッ!とキョンにしがみ付く事だって出来るのに。などと谷口並みにアホな事を考えていると、キョンがぽそりと、呟くようにこう訊ねかけてきた。 「おい、ハルヒ。本当にいいのか…?」 「な、何よ!? 怖気づいてんの、あんた!?」 あーん、もう! この期に及んで何を言い出すのよキョンったら! 「すまん、お前がふざけてこんな真似してるわけじゃないってのは分かってる。こういう事訊くのって失礼だよな。 でも俺は、お前が心を病んでた俺を励まそうとしてくれてたのを知ってるわけで…。つまり、何というか」 「…………」 「今このまま、お前とその、ヤっちまうのって、なんだかお前の善意につけこんでるみたいで、どうも気が引けるんだよな。怖気づいてるって言ったら、確かにそうかもしれないんだが」 そう言って、申し訳なさそうに目線をそらす。そんなキョンの横顔に、あたしは再び、はぁ、と溜め息を洩らした。 こいつのこういう律儀な所って、嫌いじゃないけどさ。これから先、苦労させられそうね。心の中でそう嘆きながら、あたしは両手でキョンの左手を引っ掴み、あたしの左胸に強引に押し当てさせてやったのだった。 「っ!?」 「ねえ、キョン。あたしさ、以前からずっと自分のこの胸が疎ましかったのよね」 キョンの奴は大きく目を見開いて、口をパクパクさせてたけど、あたしは構わずに話を進めた。 「この胸が膨らみ始めた頃から、親も、周りも、あたしに“女の子らしくあること”を強いるようになってきたんだもの。 自分の行動に枷をはめられたみたいで、だからあたしはこの胸がキライだった」 話しながら、あたしはふふっと軽く笑う。なぜなのかしらね、キョンが相手だとこういう話題も気負わずに話せるのは。 「ほら、高校生活の最初の頃、あたしは男子が教室に居ても平気で着替えてたりしてたじゃない? アレも、当てつけみたいなものだったのよ。胸があろうがなかろうが、あたしはあたし、涼宮ハルヒなんだ――って、無言の内に、あたしはそう主張してるつもりだったのね」 「ああ、アレにはびっくりさせられたな。もしや特殊な性癖の持ち主なのかと、密かに期待したりもしたもんだが」 「バカね、そんなわけないでしょ!?」 掴んでいた手の平の皮を、ギュッとつまみ上げる。キョンの呻き声をわざと無視して、あたしはさらに言葉を続けた。 「でもね、今はちょっと違うかな。今は下着姿だって、そう易々と見せてやるつもりもないし、あたしのこの胸で誰かをドギマギさせてやれるんなら、それもいいかなって思ってる。 それがどうしてかは…そのくらいはいちいち説明しなくても、おバカのあんたにも分かるでしょ、キョン?」 目を細めて、あたしはキョンに微笑みかける。バスタオル越しにでも、あたしのこの鼓動は伝わってはずよ。ね? ああ、それにしても。あの頃のあたしは、本当にひどい考え違いをしてたんだなあ。女の子同士がスキンシップで触れ合うのと、男の子が女の子に触れるのとじゃ、ぜんぜん意味合いが違うんだ。 うー、みくるちゃんゴメン。いつぞやのコンピ研での一件は、いま思うとちょっとひどかったかも。いつかきちんと謝っておこう。などとあたしが考えていると、キョンの奴がいつになく真摯なまなざしをこちらに向けてきた。 「すまん、ハルヒ」 ふん、ようやくあたしのこの想いを理解できたみたいね。ちょっとばかりまだるっこしい気分にさせられたけど、まあいいわ。分かってくれたんなら許してあげ…。 「俺も健康な若い男子なんでな。この状況はちょっとばかり刺激が強すぎるというか」 は? 「もう理性が持たん」 あの、もしもし? 「正直、たまりませんッ!!」 言うなり、キョンとの密着感が急激に増して。あたしはあっという間にベッドに押し倒されていた。 あーっ、もう! ちょっと見直してやったら、すぐこれだ! どうしてこういつもいつも、言う事とやる事がちぐはぐなのよあんたはっ!? そんなにがっつくんじゃないわよ! この…バカ…。 思わぬキョンの強引さに、あたしは少し眉をひそめつつ、諦めぎみに目を閉じた。いいわ、もう。煮るなり焼くなり、今度こそあたしの事をあんたの好きにしなさい、キョン――。 布団の冷たさとキョンの温もりとの狭間で、熱気を帯びたあいつの吐息が降りてくる。心持ち尖らせたあたしの唇の先が、やがて包み覆われていく。 なんだろう、初めてのキスなのに、初めてじゃない感じ。求めていたものが満たされていくような、そんな感じ。 できる事ならずっと、こうしていてほしい。開けば生意気な言葉ばかりポンポン飛び出すあたしの口なんか、このまま塞ぎ続けてほしい。ねえ、キョ…んっ? わ、わ。キョンの奴、一度唇を離して息を吸い直したと思ったら、今度はさっきよりも強く、こするように押し付けて、あたしの唇の間を割って舌先を入れてきた…。 いやあのその、あたしだって大人のキスがそーゆーものだって事くらい知ってるわよ!? でもちょっといきなりすぎっていうか、こっちだって心の準備ってものが、ねえ? う。あたしの前歯の上下の境を、キョンの舌がなぞってる。もっと奥にまで入り込みたいの? そうなのね? 仕方がない。そう、仕方がないので、あたしはあいつをもう少しだけ受け入れてやる事にした。――その数秒後、あたしは自分の判断および見通しが甘かったのを思い知る事になる。 ちょん、と先端と先端が触れて、それだけで怯えたように逃げるあたしの舌を、キョンの舌が追いかけて、押さえつけ、絡め取るように根元から舐め上げ、吸い上げて…。 ちょっと、ちょっと何よこれ!? なんかこれエロい! エロいわよこのキス! なんとなく口の中の出来事をあたしとキョンに置き換えて想像してみたら、体の奥の方が大変な事になってきちゃったじゃない。 あーん、前に見た夢だってリアリティありすぎだって思ってたのに! 現実はさらに凄いってどういう事よ!? もうっ、キョンのすけべぇ! ヤバい。いや本当に。これは少々ヤバいかもしんない。あたしは薄ら寒い恐怖さえ感じていた。キョンの事をあまりに過小評価していたのかもしれない。 単になりふり構わずっていうだけの感じだけど、こうも一気呵成に攻め込まれたんじゃ…好きにしなさいどころじゃないわ、まるで抵抗できない。このままじゃ、あたしがあたしでなくなっちゃいそう。だいたい、キョンの奴にいいようにあしらわれっぱなしっていうこの状況が気に食わないわ。キョンのくせに、生意気よ! なんとか主導権を握り返さなきゃ、と焦燥感に追われるあたし。しかしながら…いつも古泉くんとやってるボードゲームの成果なんだろうか、あたしはまたしても、あいつに先手を打たれてしまったのだった。 キ、キ、キスしながら耳を撫ぜるなあっ! あやうく、あたしは官能の波に飲まれてしまう所だったわ。けれどもその間際、頭の中にふっとひとつの疑問が浮かんで、あたしは精一杯の力でキョンに抗った。 「ぷはっ。ちょ、ちょっと待ちなさいよ、キョン!」 「あ…悪い、なんだか夢中になっちまって。息、苦しかったか?」 「それは別にいいのよ! いや良くないけど!」 「どっちだよ」 「だから、あたしが言いたいのはそういう事じゃなくて! …なんだかあんた、やけに手馴れてるじゃない。ひ、ひょっとして初めてじゃ…ないの?」 訊ねてから涙目になりそうになってしまっている自分に気付いて、あたしは内心でひどく狼狽した。 可能性として、あり得なくはない。でもキョンもあたしと同じように初めてのはずだと最初から疑って掛かりもしなかったのは、それは、別の答えを認めたくなかったからなんだ。知らなかった。あたしが、こんなに独占欲が強かったなんて…。 そんなあたしの葛藤を知ってか知らずか、キョンの奴はあたしの問いに、憮然とした表情で答えた。 「バカ言え。何の自慢にもならんが、俺は正真正銘たった今が青い春と書いて青春真っ只中だ」 「嘘! 嘘よ、だってあんた…」 「なんだハルヒ、お前『門前の小僧、習わぬ経を読む』という言葉を知らないのか?」 「へっ?」 「つまりは、見よう見まねって事だよ。 お前の朝比奈さんに対するセクハラ攻撃を、いったい俺が何度止めに入ったと思ってるんだ? あれだけ見せつけられりゃ、嫌でも目に焼きつくっての」 そうしてあいつは、あたしの耳元に顔を近づけて「本当はずっとお前にこうしてやりたいとか思ってたかもな」なんて小声でささやくと、あたしの耳を、はむっと甘噛みしてきたのだった。もう。キョンの奴ったら調子に乗って、ここぞとばかりに! でも安心感で満たされちゃったあたしの心と身体は、キョンの攻勢を受け入れざるを得なかったのよね。そっか。そこまであたしの事を見てるのか。うん。それならまぁいいわ。何が? 知らないけどまぁいい。 ここはあんたのお手並み拝見と行きましょ。たまにはあたしの事をきちんとリードしてみせなさい。ねっ、キョン――。 それからまあアレやコレやを経て、あたし達の最初のセックスは終わった。 別にごまかすつもりはないんだけれども、この後の事は断片的にしか記憶がない。お互いに初めてだったせいもあって、何というかおままごとみたいな? そんなつたないセックスだったと思う。 でもまあ、あたしは結構満足していた。右も左も分からない中を無我夢中で駆け抜けるような、あんな感覚って嫌いじゃない。誰かに手ほどきを受けるより、むしろその方が痛快じゃないの。 当然ながら、反省点も多々あるんだけどね。 えーと、ほら動物の世界で『マウント』ってあるじゃない。犬とかが自分の優位性を誇示するために他の犬にかぶさる、ってヤツ。 アレの最中は、やっぱり人間も動物みたいになってるんだか――その、あいつがのしかかって来るたびに「ああ、あたしは今、キョンのモノにされてるんだ」って思えて…それが何故だか嬉しくって…。 一個人としては「女の子をモノにする」っていうのはむしろ不愉快な表現なんだけども、でもあの時ばかりは不思議とあいつの体重を、ベッドのスプリングに分けてやるのが無性にもったいないような気がしたの。 で、キョンの奴が「もう少し力抜いた方がいいぞ」って言ってるにも関わらず、やたらと四肢を踏ん張ってしまったあたしは現在、首から背中にかけてアンメルツヨコヨコの匂いを漂わせたりしているのだった。あと実は、お腹の中もちょっとヒリヒリ痛い。生理用の痛み止めでなんとか紛らわしてるけど。 教訓。その場の感情に流されすぎちゃダメね。利用できる物はきちんと利用するべきだわ。そう日記には書いておくとしよう。 それにしても。 『涼宮ハルヒ秘密日記』のページ上にトントンと意味もなくペン先を振り下ろしながら、あたしは口をアヒルみたいにしていた。 今更ながらに思うけど、キョンの奴ってズルい! ううん、あいつがズルいのは前々から分かってたのよ。毎度あたしの後ろからひょこひょこ付いてきて、美味しい所だけご相伴に預かろうとするような奴だものね。 でも、今回ばかりはちょっと許しがたい。そうよ、あの行為の最中は気が付かなかったけど、こうして家に帰ってお風呂に入って夕食を済ませてから落ち着いて思い返してみるに――。 キョンの奴、あたしに「好き」とか「愛してる」とか、まだ言ってないのよ!? あたしに散々アレだけの事をしておいてッ! あたしの初めてを…あんな風に奪っといて…。 いやまあ、実はあたしの方も改まって告白したりするのは気恥ずかしくて、まだきちんと言葉にしてはいなかったりするのだけれども。ただ礼儀として、あーゆー事したからには男の方から言ってくるのが作法っていうか? 確かに『古泉くんとあたしがナニするのを邪推して嫉妬した』みたいな事はあいつも言ってたけど、でも「嫉妬した」と「好き」は微妙にイコールじゃ無いじゃない!? それとも…キョンはやっぱりあれは一時の対処療法みたいなものだとか思ってて、好きだの愛してるだのっていう形而上の言葉であたしを拘束してしまうのが嫌だったんだろうか。 確かに胸の話とか、「行動に枷をはめられるのはイヤ」みたいな事を言ったのはあたしの方なんだけども。でもどっちにせよ、キョンの奴ってばやっぱりズルいと思う! うん! …そこを含めて、好きになっちゃったから参ってるのよね。 机の上の小さな鏡を見ながら、左の頬を撫ぜてみる。あたしの頬をはたいた時のキョン…恐かったけど、格好良かったなあ。あんなに真剣に怒ってくれるのは、あたしの事が大切だから、だよね? まあいいわ、今回だけはキョンの無礼を見逃してあげるとしよう。一応、コトが終わった後に、 「ハルヒ…今のお前、反則的なまでに可愛かったぞ…」 なんて事は言ってくれたし♪ あ、でも調子に乗って、汗やら何やらでベタベタした手で頭を撫ぜたりしないでよねっ? リボンが汚れちゃったじゃない! ちょうど替えがあったから良かったけど。あ~あ、これ割とお気に入りだったのにな。一度染み込んじゃうと、洗濯したってこの匂いはなかなか落ちな……… ここは自分の部屋の中で、もちろん居るのはあたし一人だというのに、なぜだかあたしは左右をきょろきょろ見回して、それから机の引き出しに、そっとリボンをしまい込んだのだった。 そ、そうよ、このリボンはもう人前じゃ付けられないから、ずっとこの中にしまっておく事にするわ、うん! …いったい誰に向かって言い訳してるのかあたしは。 はあ、それにしてもまあ。たった一日の間にファーストキスから何から、我ながらずいぶんとコトを進めてしまったものだ。 ついこないだまで、恋愛なんてのは交通事故みたいなもので、きちんと注意さえしていれば回避できるものだと思ってたのになあ。今はもう、四六時中あいつの事ばかり考えてる。キョンの奴には、出会い頭に思いっきりハネられちゃったって感じよね。ほんと、不覚だわ♪ …って、あれ? ちょっと待って!? そういえばキョンの奴、昼間、喫茶店でこんな事を言ってなかったっけ? 『人間なんて明日どうなってるか分からないから、みんなもせめて事故とかには気をつけろよな。特にハルヒ』 それからあたしに向かって『お前は直情径行の向こう見ずで、後先考えずに動くから』とか何とか言ってたような…。 えっ、えっ? ひょっとしてアレって、いわゆる暗示って奴? キョンってもしかしてもしかすると、予言者!? なんてね。たかだか1回セックスしたくらいで、奴の事を特別に不思議な存在だとか勘違いするほど、あたしは愚かじゃないのだ。 だいたいアレを『予言』だなんて言うんなら、あたしにだってそのくらい出来るわよ。そうね、たとえば――。 言わせて貰うなら、セックスなんてのは単なる行為のひとつに過ぎない。少なくともあたしはそう思ってる。 愛情がなくったって出来るし、何の証明にもならない。セックスしたから彼はわたしの物♪なんて、おかちめんこな考え方は噴飯物だ。一時の気の迷いで、そうひょいひょいと人の所有権を移動させないでほしい。 結局その考えは、あたしこと涼宮ハルヒが実際にセックスを経験した後も、特に変わる事はなかった。だからやっぱり、セックスなんてただの行為なのだ。 ただ、これだけは断言しておこう。 客観的、一般的には単なる行為だけれども、このあたしにとってはあんなに痛くて恥ずかしいコトは、よっぽど好きな奴が相手じゃなければとても出来やしない、と。経験者として、それは確信できる。そして今のあたしにとって、その相手はただ一人だけ…。 そう考えている内に、あたしは無意識に携帯の通話ボタンを押していた。 「(ピッ)もしもし、ハルヒか? こんな夜更けにどうし」 「分かってんの、キョン!? あんたは50億分の1、ううん、宇宙人やら未来人やらを含めても、世界中でたった一人の存在なのよ!? すごくありがたい話でしょうが! 選考委員のあたしにはもっともっと感謝するべきよ! 違う!?」 「…違うも違わないも。いきなりそんな勢いでまくし立てられたって、話の筋が全く分からん」 ああ、もう。本当に理解力にとぼしい奴ね。手間が掛かる事この上ないけど、やっぱりあたしがリードしてやらきゃだわ。 「いいから! あんたはこれからもあたしについてくればいいの! それとすっとぼけてる罰として、次に逢う時の食事代から何からは、ぜ~んぶあんたのオゴリだからねッ!」 「いや待て待て。次ってお前、今日のホテル代も結局は俺が払わせられたし、そのあと合流した朝比奈さんと長門には、なぜか特盛りパフェをご馳走させられたし、さすがに財布の中身がだな」 「なに言ってんの! 今日のあんたはみんなに心配とか迷惑とか掛けまくったんだから、そのくらい当然でしょ!? 急用で帰っちゃった古泉くんにも明日、学校でちゃんとお礼言っとくのよ!」 「へーへー。って、お前は俺の母上様か」 「うっさい! 文句があるんだったら、あたしに有無を言わせないくらいの気概をまた見せてみなさいよ、このバカキョンっ!」 ふふっ、気概を“また”見せてみなさいよ、か。 はてさて、次の機会はいつになる事やら。まるで見当も付かないけど、それまではこの、肝心な言葉をきちんと口にする事さえ出来ないムッツリスケベ男の尻を叩き続けるとしましょ。 そうして、携帯を通じてあいつへの叱咤を続けながら、あたしはこっそり今日の日記に、最後の一文を書き込んだのだった。 『初めての相手がキョンで、本当に良かった』 ――ってね♪ 涼宮ハルヒの不覚 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/949.html
プ ロ ロ ー グ 俺たちの高校生活最後の冬。 俺とハルヒの意地の張り合いがもたらした、二度目の世界崩壊の危機。 そうだ。俺が弾を装填し、ハルヒが引き金を引いた、全宇宙を一方的に巻き込んだあの大事件。 あれから既に長い歳月が過ぎているというのに、今思い起こしても平常心ではいられなくなる。関係各位には、誠に申し訳ないことをしたという気持ちでいっぱいだ。 未来の機密組織がハルヒを抹消しようと潜入してきた、その中に自称涼宮ハルヒの子孫がいたが結局、改心したらしく計画は見事中止になった、まぁその後SOS団の準団員って形で学校に留まってたがな。 しかしこれはハルヒにとってただの演習ぐらいにしかすぎなかったと思う。その後 全宇宙規模で発生した閉鎖空間。その内部では、ハルヒを知る存在たちが一堂に会し、好意的に見ればそれは、ハルヒ杯争奪全宇宙オールスター対抗大運動会(強制参加型)とも言うべき様相を呈していた。 閉鎖空間内では、現状維持派と急進革新派とのあいだで様々な思惑が入り乱れ、熾烈な戦いが繰り広げられた。 情報制御すらままならず物理的攻撃が不可能な敵対的広域帯宇宙存在たちは、以前の雪山のような方法でSOS団への精神的攻撃を試み、未来を予測可能である敵対未来人組織たちは、俺たちを内部分裂させるべくハルヒと俺に対してあらゆる工作活動をおこない、閉鎖空間内でその力を存分に振るえる敵対的超能力者たちは、赤い光となって俺たちに攻撃を仕掛けてきた。 長門は制限を余儀なくされた能力をなんとか駆使して抗戦し、朝比奈さん(大)が未来人の知識をもって俺たちに助言を与え、朝比奈さん(小)はおろおろしつつも時間移動を応用した空間移動と長門によって解禁されたフォトンレーザーやら超振動性分子カッターやらの超科学的兵器で俺たちを何度も危機から救い、そして古泉はその能力を遺憾なく発揮して敵対勢力の物理的攻撃に対抗した。 当然の反応として、この超常的展開に一人狂喜するハルヒは、以前俺が見たものよりも質、量ともはるかにパワーアップされた神人軍団を無意識的に生み出し、敵対勢力を次々となぎ倒しはじめた。 だが神人の活躍もむなしく、一人また一人と倒れてゆくSOS団員。 そうしてハルヒはついに、これが自分の望む世界の在り様ではないことを受け入れた。 閉鎖空間の終焉は、やはりというべきか、俺とハルヒのキスによるものだった。 以前のような、成り行きまかせのものでも一方的なものでもない。 俺たちはこの騒動のおかげで、お互いに対する気持ちを確かめ合うことが出来た。 俺の場合は、なによりも俺自身の想いをはっきりと認識し、覚悟することになったわけだが。一度目と同じ、あのグラウンドで、俺たちは永遠とも思えるほどの長い時間を共有していた。 唇を重ね合わせ、お互いをしっかりと抱き寄せて。 絶対にこの手を離したくないと思った。 ハルヒだってそう思っていたはずだ。 俺は、本当に心から時間が止まって欲しいと感じていた。 世界が変わったとさえ思える瞬間だった。 いつしか閉鎖空間は消滅し、俺はまた自室で目覚めた。 今回はベッドから転げ落ちることもなかった。 フロイト先生もきっと祝福してくれていたに違いない。 その後、立て続けに携帯が鳴った。 最初の電話は長門からだった。 「六年前の涼宮ハルヒによる情報爆発、それを超える二度目の情報爆発が観測された。それと同時に、情報統合思念体は自律進化の糸口を得た。情報統合思念体主流派は、あなたと涼宮ハルヒに感謝している」 と、いつもの淡々とした口調でそれだけを述べ、ぷつりと電話は切れた。 なんてことだ。それはあのキスが原因なのか? まさかそんな大それたことが起こっていたとは。 ところで長門、お前自身は感謝してくれないのか? 長門の電話が切れるなり、続けざまに古泉から連絡があった。 「機関の方がかなり混乱していまして、手短にお話しします。僕の能力が消滅しました。ですが、これはむしろ喜ばしい状況と言えます。我々の能力の消滅と同時に、涼宮さんが二度と閉鎖空間を生み出さず、世界も改変しないという確証を得ました。なぜ解るのかと言うと、残念ながら説明出来ません。解ってしまうのだからしょうがない、としか。僕のアルバイトがなくなってしまうのは少々寂しいですが、これで世界が永遠に救われたと思えば、それもまたよしです」 その口調の端々に本心からの喜びがうかがえた。 どうやら、キスの瞬間に感じたことは事実だったようだ。 本当に世界は大きくその様相を変化させてしまったのだ。本来あるべき姿に。 それから数分後、最後は予想どおり朝比奈さんからの電話が鳴った。 「キョ、キョ、キョン君っ!」 明らかに混乱していた。当然ながら、俺には朝比奈さんが次に何を言うのか想像出来る。 「すすす涼宮さんからの、じじ時空振動が、けけ検出されなくなりましたっ!」 「朝比奈さん、解りましたからとにかく落ち着いてください」 電話口からゆっくりとした深呼吸が数回聞こえた。落ち着きを取り戻した朝比奈さんは、 「涼宮さんに関係する時空の不確定要素が消滅しました。つまり未来が確定されました」 そして、少なからず寂しそうな声で、 「私の役目もこれで終わっちゃいました。名残惜しいですが、もうすぐお別れのときがくると思います」 そうか。ついに朝比奈さんともお別れなのか。 あなたのお茶が飲めなくなるかと思うと、俺も本当に寂しいですよ。 このようにして、唐突に始まった涼宮ハルヒを取り巻くありとあらゆる不思議な現象は、唐突に終わりを告げたのだった。 そう思っていた。これが実は終わりなどではなく、本当の意味で全ての始まりになることなど、当時の俺には全く想像出来ないことだった。 第一章